銀行員・証券マンが語る、過酷すぎる「リアル半沢直樹」の世界

自分の面子を保つことが最重要
高堀 冬彦 プロフィール

情報漏洩のリスクは…?

半沢は東京中央銀行が1500億円にも達するM&A案件を奪ったので憤った。それ以上に激怒したのが、この情報を東京セントラル証券から銀行に漏らした人間がいたこと。半沢と同じく、銀行からの出向組である諸田祥一・営業企画部次長(池田成志、57)と部員の三木重行(角田晃広、46)だった。

この半沢の憤りは至極まっとうなものだった。東京セントラル証券の利益を損なったからではなく、M&Aの情報は決して外部に漏らしてはならないからだ。漏洩先が親会社であろうが、同じである。

「M&Aに関する情報にはファイアーウォールがかかる。外へ出してはいけないのです」(真壁教授)

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また、諸田と三木は情報を会社のメールを使って銀行に流し、だから半沢にバレてしまったのだが、真壁教授は「あり得ない。荒唐無稽」と語る。2人の手口はあまりに杜撰だったのだ。

会社側が社員のメールを見るというのは珍しい話ではない。その行為は組織秩序の維持などの観点から原則として適法との判例もある。社員のプライバシー侵害は許されないものの、情報漏洩のリスク対策としてのメール閲覧は行えるという考え方が一般的なのだ。

準大手証券のベテラン社員は半沢らのM&A案件への取り組みを興味深く眺めている。身近な話だからではなく、その逆。自分たちとは縁遠い話であるからだ。

「M&Aに関われるのは大手証券くらい。その中でもごく一部の人間しか携われない。だから大半の証券マンはM&Aの経験がない」(準大手証券の社員)

資金力の問題だ。東京セントラル証券も大手ではない。そんな同社が世界第3位のメガバンク・東京中央銀行とM&Aをめぐって争い、勝つとしたら、金融界の事件に違いない。伊佐山が半沢を舐めているのはある種、当然のことでもあるのだ。