「塾通い」と近視のリスク
近業と近視の研究で関連性が指摘されているのが読書と勉強である。
シンガポールでは小学校時代に習熟度別のコースに分かれるが、その中でも勉強ができるコースに入った子どもは近視になりやすく、最終的に学歴と近視には関連がみられたという。台湾では、日本と同じように学校の放課後に塾にいくことが一般的である。塾に通い平日4時間勉強をすると近視になるリスクは20%増加すると報告されている。
先に引用したメタアナリシスでは、欧米よりも東アジアの近視の有病率が高い理由として、親は子供の成績を気にかけ、子どもがそれに応えて一所懸命に勉強することを挙げている。確かに、近視の有病率の高い国である中国の都市部、シンガポール、台湾、韓国、日本などは国際学力比較調査の上位国である。
国際的な学力比較調査の一つ、国際数学・理科教育調査(TIMSS)の2015年調査のトップ5はシンガポール、韓国、台湾、香港、日本であった。この5各国とも近視の有病率が高い国でもあるのは興味深い。学力が高いことは良いことだろうが、私たちは、その代わりに視力を失っているのかもしれない。

「外遊び」が近視を防ぐ
では、読書や勉強を控えても近視を予防することはできないのだろうか。
この20年ほどの研究で明らかになったのは、外で遊ぶ時間・外で過ごす時間が増えると近視が減少するということについては、コンセンサスが取れているということだ。メタアナリシスによると、1週間に屋外で過ごす時間が1時間増えるごとに、近視の有病率のリスクが2%減少するという結果が出ている。
2%というと少ないようにも感じられるが、1週間は168時間あり、そのうちの1時間なので少ないように感じるのであって、例えば1日1時間外にいる時間が増える、つまり1週間に7時間増えると、近視リスクは13%減少する。13%というとなかなかの予防効果である。
「ゲームばかりせずに外で遊びなさい」と保護者や親などに言われた経験がある人も多いだろう。近視予防という観点については、この言葉は正しかったようなのだ。