「もう無理、死にたい」…ALS患者嘱託殺人事件に医師が思うこと

安楽死をめぐる論点とは?
美馬 達哉 プロフィール

京都での嘱託殺人事件

こんな当たり前のことを再確認しなくてはならないのは、7月23日に発覚した京都でのALS者の嘱託殺人事件が、安楽死や尊厳死との関連で語られているからだ。

報道によれば、容疑者の医師らは、「安楽死させてほしい」などとネットに書き込みしていたALS者(四肢の麻痺した状態)とSNSで連絡を取り、100万円以上の対価を得た上で、昨年11月30日に自宅を訪問して秘密裏に薬物で殺害したとされる。

一度書いたことがあるが、用語の整理も兼ねて安楽死をめぐる論点を挙げておこう(参照「「良い死」で死にたい…賛否両論の「安楽死」いま何が問題か」)。

 

現在の日本で安楽死・尊厳死を論じるとき、頭の中で想定されているのは次の4つだ。

一つは身体的苦痛のひどい病気で死期が近い場合に医師が毒物を投与する安楽死(積極的安楽死)である。

これは、森鴎外の小説『高瀬舟』のイメージと似ているものだ。

だが、現在では各種の鎮痛剤による緩和医療が広く行われるようになったため、世界的にも論じられる必要性はほとんど無くなっている。

第二は、ナチスドイツが行っていたもので、生きる価値が無いとされた心身障害者や高齢者が次々と有無を言わさず強制的に安楽死させられた。

これは、安楽死に批判的な論者が必ず挙げるが、さすがに極端すぎる例かも知れない。