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「もう無理、死にたい」…ALS患者嘱託殺人事件に医師が思うこと

安楽死をめぐる論点とは?

日常の臨床からみえること

脳神経内科医という立場上、ALS(筋萎縮性側索硬化症)も含めて神経難病の方々を診療する機会はしばしばある。

いまだに原因も治療法もはっきりしないものも多く、病状に応じての対症的な何かができれば良い方で、進行を止めることも難しい場合など、医学の無力を痛感させられる。

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たとえ、高齢者には多いよく知られた病気――慢性心不全、糖尿病、高血圧、多発脳梗塞、閉塞性肺疾患など――であっても、複数合併していたり、年齢による身体の衰えも加わったりすれば、その場しのぎの治療で当面の問題をやり過ごしつつ、様子を見ていくことになる。

そうして病気に患って苦労している人びとは、ふと「死にたい」といった内容の言葉を漏らすことがまれではない。

 

病気の進行や年齢とともに衰えていく知力や体力を実感するとき、もう乗り越えられないという気分になることは、誰にでもあることなのだろう。

そのとき医師の仕事は、看護や介護のスタッフや周囲の人びとと協力して、将来への不安にていねいに耳を傾けたり、「死ぬなんてこわいこと言わんといてーな」と伝えてみたり、一緒にどうするか悩んでみたり、それに加えて、もちろん医師として新しい治療法がないか探して勉強や研究したりすることだ。

医師免許は殺しのライセンスではなく、本人に自殺の希望があったとしても、頼まれての殺人は嘱託殺人であって医療行為ではない。