「右派が持っていて左派に決定的に足りないもの」とは一体何か?

隣に座って話を聞くことが本当に大事
ブレイディ みかこ, 石戸 諭 プロフィール

コロナで注目されなかった大事件

ブレイディ 英国は、去年の12月の英国総選挙で労働党が大負けしたじゃないですか。そのあとに、報道が新型コロナ一色になって注目されなかったんだけど、一つ大きな事件がありました。

数年前から労働党の中で、反ユダヤ主義的な言動が蔓延していると批判され、人権機関が調査に乗り出していたんです。ところが、その報告書の一部がリークされて、労働党内の差別発言を取り締まるべき部署に反コービン派の職員が複数いたから、それを放置していたことが明らかになった。

反ユダヤ主義的な言説が広まったほうが労働党の支持は落ちる。そうなるとコービンは党首を辞任しないといけなくなる、と考えたわけです。党派性に目がくらんで、然るべき部署の職員たちがまともに調査もしなかったし、差別を取り締まることもなかった。私はこのニュースを読んだときに、絶望的な気分になりましたね。左派の労働党の職員になるということは、差別とかそういうことはいけないよねと思うタイプの人だったはずなのに、そういう個人の生きるうえでの原則みたいなことですら、党派性の前には譲り渡してしまうのかって。こういうのって、大むかしの話かと思っていた。反コービン派だけじゃなく、コービン派でも、あの画期的な本を書いた著者がこんな詭弁を使って身内を守るのかって衝撃を受けたこともあったし、コービン時代後期の労働党の内紛には本当にうんざりさせられて、「もういいかな」って気分にさえなりました。

石戸 党派性は人間をも変えてしまうし、よくない。党派性に流されないために、僕も隣に座って調子どう? を大切にしていきたいと思います(笑)。自分たちも読者をちゃんと獲得し、きちんとマーケットや読者とも向き合っていかなきゃいけないと思いました。今日はありがとうございました。