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「米中の暴走」の歯止めになるか…EUが示した「統合の大義」

コロナ復興ファンド設立、その意義とは

国際的な緊張が高まる中で

欧州連合(EU)は7月21日、加盟27ヵ国の首脳らによる足かけ5日に及ぶ粘り強いマラソン会議を経て、新型コロナウイルス感染症危機からの復興・再生を目指す復興ファンド(資金規模7500億ユーロ、約92兆円)創設の合意に漕ぎ着けた。

その意義は、イタリアやスペインに資金を融通して復興を支援することで、英国に続くEU離脱希望国の登場をけん制する効果にとどまらない。

現下の世界情勢の下では、EUとEU加盟国が対立を乗り越えて「EU統合の大義」、つまり平和と協調を優先する存在であることを改めて国際社会に示した点でも大きな意義がある。

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一方、歴史的な合意の2日後の7月24日、中国は、米国に対し、成都にある総領事館を閉鎖するよう通知したと発表した。この通知は、米国が知的財産窃取の拠点になっているとヒューストンの中国総領事館の閉鎖を求めたことへの対抗措置として発せられたものだ。

その後も、米司法省が中国人4人をビザ(査証)の不正取得などの容疑で逮捕したり、中国が退去後の領事館に米国務省が立ち入ったのはウィーン条約違反だと批判したりで、米中両国は振り上げた拳を下す気配をみせず、お互いに態度を硬化し続けている。

この知的所有権問題の再燃は深刻だ。貿易戦争、技術覇権争い、香港や新疆ウイグル自治区の統治・人権問題、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を巡る責任問題、そして南シナ海・東シナ海の領有権問題に続き、米中間の大きな火種となる様相を呈しており、国際的な緊張を一段と高めている。

こうした中で、今回加盟27カ国の堅い結束を示したEUには、性急な制裁合戦を繰り広げ、いたずらに国際関係の緊張を高める米中2大大国と真正面から向き合って自重を求め、両国の暴走を食い止める役割が期待される。その意味で、EUは日本にとって連携を強めなければならないパートナーであることが改めて立証された。