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E・トッド語る「エリートこそが、社会の〈分断〉を進めているのです」

背後にある、高等教育の大きな問題

フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は、新刊『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』(PHP新書)で、社会を「教育」の観点から描き出している。

高等教育が広がることは、社会にとって本当は何を意味するのか。高等教育を受けた一部の人々によって推し進められてきた自由貿易やグローバル化という現象とは何なのか。さらには、昨今、世界中を揺るがし、いまだ終息を見せない新型コロナウイルスという前代未聞の出来事に、トッド氏は何を見たのか――。

 

エマニュエル・トッド氏は歴史人口学者として、これまでに多くの著作を世に出してきたことで知られるが、「社会の今後」についての予測の的確さでも有名だ。たとえば『最後の転落』ではソ連の崩壊を予測した。

一方で、『第三惑星 家族構造とイデオロギー・システム』と『世界の幼少期 家族構造と成長』では家族構造と社会の上部構造の関係性を示し、大きな反響を呼んだ。緻密なデータの蓄積と家族構造という人類学的な観点から飛び出す分析は鋭く、時には人を驚かせることもある。そんなトッド氏の新刊、「大分断」は、教育を軸にした視点で社会を描き出した、日本の読者に向けた語り下ろしだ。

筆者は本書の翻訳者として、また、インタビュアーとして制作に携わった。今回はその新刊の一部をご紹介をしたいと思う。

高等教育の意義の変化

こんにち、先進諸国の大学進学率は上昇し、大学進学率は日本でもほぼ50%という数字になっている。かつては、一部の高等教育を受けたエリートたちが、エリートであることの責任を感じていたが、現在では高等教育を受けることに高尚な意味はなくなり、それが単なる「資格」となってしまったことを嘆く。