厳しい現実に直面したサラヤの動きは早かった。社長自らがボルネオ島を視察し、翌年には持続可能な方法で生産されるパーム油の国際認証制度に取り組むことを決めた。

持続可能なパーム油とはWWFなどが中心となって設立した「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」によって定められた要件を満たす認証油。森林や保護価値の高い地域に新たにプランテーションを開発しないことや環境に負荷を与えない生産方法、生産者の労働環境や人権の確保などを含む7つの原則と41の基準からなる厳しいものだ。

「認証油を使っている商品にRSPOマークを表示するには、自社をはじめ洗剤を製造する過程で関わる加工業者なども厳しい監査を受ける必要があり、費用も手間もかかります。それでも表示にこだわるのは、消費者に認証の存在を知っていただきたいから。目に見える基準があれば納得して選べる。その輪を広げていきたいという思いからなんです」

2006年には現地環境保全団体「ボルネオ保全トラスト(BCT)」の設立に参加。ヤシノミシリーズの売り上げの1%(メーカー出荷額)を拠金することでプランテーションとなった森を買い戻し、森の復元に着手。分断された森の中でも動物が自由に行き来できる「緑の回廊」計画をスタートさせた。

サラヤと現地NGOなどで架けた「命の吊り橋」。大阪の消防署の廃棄ホースをリサイクルした。

キナバタンガン川の支流をボートで進んでいると、頭上に大きな吊り橋が現れた。実はこれもサラヤがBCTや協力企業と作ったもの。

本来オランウータンは一生を樹上で過ごし、木を伝って食べ物や繁殖相手を探して移動する。が、プランテーションによって分断された森では移動手段が制限され、食料確保もままならない。ならば、まだ開発の手が伸びていない川向こうの森に移動できる橋を架けたらどうか。それなら水を嫌うオランウータンも安心して川を渡ることができる。文字通り、「命の吊り橋」だ。

サバ州の「セピロク・オランウータン・リハビリテーション・センター」。人間との衝突により親を失った孤児を保護し、野生復帰を目指す。原生林に近い環境の森が広がり、柵のない園内を自由に移動するオランウータンを見学できる。

もう一つ、森林の分断によって起こった問題が人間と動物との衝突。ゾウやオランウータンはときにプランテーションや民家の近くを通ってしまう。その多くは害獣として捕獲・駆除されてきた。サバ州には親を失ったオランウータンの孤児を保護する施設があり、野生復帰へのプログラムも行われているが、人間に育てられた彼らが完全に野生に戻り自活できるチャンスは未だ少ない。

ボルネオ島の森林破壊によって親を失い、保護施設で育ったメスのオランウータン。野生復帰プログラムの途中でオスと出会い、母となった。現在は施設と野生を行き来しながら暮らしている。
サラヤも設立に協力した「ボルネオ・エレファント・サンクチュアリ」では野生生物局と連携し、問題に巻き込まれたゾウの保護を行っている。親とはぐれた1歳の子ゾウ。

「同じことはゾウにも起こっています。サラヤでは2005年から保護活動を開始し、2013年には捕獲された個体や孤児のゾウを保護する施設の建設プロジェクトに参加しました。今後は一般に公開し、地元民や観光客にボルネオゾウという存在の尊さや、今起きている問題を知っていただく啓蒙的な役割を担っていけたらと考えています」