ボルネオ島の熱帯雨林。豊かに見えるが、この周囲には広大なアブラヤシのプランテーションが広がっている。

要因のひとつとして考えられるのが生息地の減少。果てしなく見える熱帯雨林だが、一歩足を踏み入れると森はすぐに途切れてしまう。あるのはヤシの木の林で、整然と並んだそれらは素人が見ても人間の手で植えられたものだとわかる。

そういえばサバ州の空港へ安くて便利なパーム油が脅かすボルネオの森と生命到着する直前、飛行機の窓から異様な光景を目にした。一面に広がる森の中に碁盤の目のように走る道。道で区切られた区画には周囲の森より一段明るい木々が並ぶ。田んぼのような感じで、「なんだろう?」と思ったのだ。

空から見たボルネオの森。薄い緑の部分がプランテーション。

「アブラヤシのプランテーション(大規模農園)です。そこの川べりにもアブラヤシの木が見えるでしょう。川沿いの原生林は法律で伐採が禁止されていますが、違法なプランテーションはそこかしこにあるんです」

そう教えてくれたのは今回の旅をアレンジしてくれた洗剤メーカー・サラヤ株式会社の代島裕世さん。15年以上前からこの地に通い、森と生き物の変化を見続けてきた人だ。

アブラヤシの実。この果肉と種から油を搾る。

栽培の目的はその果肉から採れる「パーム油」と種から採れる「パーム核油」で、前者はインスタント麺やポテトチップスなどの食用油に、後者は化粧品や洗剤などさまざまな製品に使われる。

パーム油は単位面積あたりの収穫量が非常に多い。安価で価格が安定的ということで、2005年には大豆油や菜種油を抜いて世界一の生産量となった。もちろん日本もパーム油の輸入国だ。こうした世界的なパーム油需要の高まりとともに、ボルネオ島では1990年代以降、劇的に森林伐採とプランテーション開発が進行。過去半世紀の間に島の森林面積は50%以上消失したと言われている。その危機に日本企業としていち早く気がついたのがサラヤだった。

アブラヤシの実。オレンジの部分が果肉で白い部分が種。

「サラヤは1952年、赤痢予防のための手洗い用石鹸からスタートした会社です。創業以来、社会的課題解決に取り組み、1971年には排水が微生物によって素早く分解され、環境への負荷が少ないヤシノミ洗剤を業界に先駆けて販売しました。ところが2004年、あるテレビ番組の取材を受けたことから、洗剤の原料であるパーム油生産のため、ボルネオ島の森が破壊され、野生動物たちが行き場を失っているという事実を知ったんです」

ボルネオ島の熱帯雨林の変化

濃い部分が原生林。熱帯雨林減少の主な要因は輸出用木材のための伐採やパーム油の原料となるアブラヤシ、紙の原料となるアカシアを栽培するための農地転換など。(出典:WWF)

地球にやさしいエコ洗剤と信じ、自信を持って世に出していた商品。たしかに水環境には負荷が少ないが、その反面、原料生産のためにボルネオ島の生命を脅かしていた。