赤道直下の島、ボルネオ島。深い熱帯雨林に覆われた美しい島は今、人間の快適で安全な日常生活と引き換えに、森と生命の危機に瀕しています。そのきっかけは、私たちの暮らしに欠かせない植物油である「パーム油」。森を守り、人にもやさしい商品づくりに情熱をかける企業の取り組みを追いました。

安くて便利なパーム油が
脅かすボルネオの森と生命

テングザルの群れ。リーダーのオスは大きな鼻をもつ。彼らもまた森林減少によって絶滅の危機に瀕している。

ボルネオ島の熱帯雨林の朝は賑やかだ。鳥たちの歌声を合図に森には生命の気配が漂う。森を縫うように流れる川をボートで進むと、対岸の木が揺れているのに気がつく。目を凝らすと、大木の枝という枝にサルが腰掛けている。オレンジの毛に白く長い尾。ひときわでっぷりとしたお腹に天狗のように長い鼻を持つのがオスで、群れのリーダーだ。

大きなクチバシにツノのような突起をもつカササギサイチョウ。羽を広げると1.5mほどにもなる。

「サイチョウだ!」。今度は空に注目。黒々とした羽に鮮やかな黄色のクチバシは巨大で、立派なツノのようなものがのっている。サイのツノのように見えるから「サイチョウ」。熱帯雨林の住人たちはなんともユニークだ。

約1万5000種以上の植物が確認されているボルネオ島の熱帯雨林。高さ70mほどの大木も珍しくない。

東南アジアのボルネオ島は赤道直下に位置し、面積は日本の約2倍。北東部の3分の1がマレーシア領、それに囲まれるようにしてブルネイがあり、南側の3分の2がインドネシア領。年間通して気温が高く、降水量は4000mm前後。豊富な雨と温暖な気候によって生まれた深い熱帯雨林は、膨大な二酸化炭素を吸収することからアマゾンと並んで「地球の肺」と呼ばれ、生物多様性の宝庫だ。

ボルネオ島北東部を流れるキナバタンガン川は全長約560km。とくに下流域は生物多様性の宝庫。流域のスカウ村にはロッジが点在し、ボートによるエコツアーが行われている。
スコールの後の夕焼け。日が落ちると水面に小さな光が見え、それがワニの目だと聞いたときは腰が抜けそうだった。

次々と生き物が登場するジャングルクルーズに興奮している傍らで、ガイドが「運がよければゾウやオランウータンも見られるかも」と言う。ここマレーシア・サバ州・キナバタンガン川流域はその両者の生息地で、ことボルネオゾウはボルネオ島にしか分布しない。まさにボルネオ島を代表する生き物たちだが、両者ともに今、絶滅の危機に瀕している。