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金融のプロが見た『半沢直樹』のリアリティ

ドラマ成功のカギを探る

『半沢直樹』7年ぶりの新シリーズ

TBS系のドラマ『半沢直樹』の7年ぶりの新シリーズが、先週の日曜、7月19日から始まっている。前回、2013年に放送されたシリーズは最高視聴率が42.2%と、平成のテレビドラマでは1位となる記録を叩き出し、主人公・半沢の決めゼリフ「やられたらやり返す。倍返しだ!」は流行語となった。

待望の新シリーズは、コロナ禍によって撮影が中断され、3ヵ月遅れでのスタートとなったものの、初回の視聴率は22%と、まずは好発進を切っている。

 

前シリーズのラストで、堺雅人演じる半沢は、勤務先の東京中央銀行の常務・大和田(演:香川照之)の不正を暴いたにもかかわらず、子会社の東京セントラル証券への出向を命じられた。

今回のシリーズでは、出向先で半沢が大手IT企業による買収案件をアドバイザーとして請け負うも、銀行の証券部長・伊佐山(演:市川猿之助)にそれを横取りされたため、親会社に戦いを挑むことになる。

『半沢直樹』にかぎらず、銀行を舞台にしたドラマでは「出向」という言葉がよく出てくる。銀行員が銀行から関連会社などに出されることをそう呼ぶわけだが、銀行の内情をよく知らない人には、左遷とほぼ同じ意味で認識されているのではないか。

ドラマでは出向といえば、たいていペナルティ的なものとして命じられるパターンが多いから、よけいそういうイメージでとらえてしまう。

「出向」は二度と戻れない片道切符

しかし厳密にはどうも、銀行における出向は、一般企業における左遷とはちょっと意味合いが違うらしい。そもそも銀行で無事に定年退職を迎えるという人はほとんどいないからだ。

浪川攻氏の『銀行員はどう生きるか』(講談社現代新書、2018年)によれば、銀行では、定年年齢である60歳よりも、かなり早い時期に退職を促すしくみになっており、その年齢を超えて銀行に残ることができるのは、役員などごく一部の人たちに限られる。

それ以外はほぼ全員が50歳前後になると、グループ企業である子会社や関連会社、あるいは取引先企業へと去っていくのだ。

前掲書には、《当初は出向の形態で赴いたとしても、その後、正式に転籍となって銀行とは完全に袂(たもと)を分かつ哀しい運命にあり、行き先が取引先企業の場合は、その企業の経営悪化の立て直しといった特別なケースを除いて、やはりそのまま転籍となる。要は、銀行には二度と戻れない片道切符なのだ》とある。

これを読むと、出向とは必ずしもペナルティとは限らないけれども、この形態で銀行を出るとたいていは二度とは戻れないので、けっしてありがたいものではないと理解できる。大学卒業後、頭取をめざして銀行に入った半沢としてはなおさら出向は避けたかっただろう。

ここで参照した『銀行員はどう生きるか』と、同じく浪川氏が講談社現代新書より昨年上梓した『ザ・ネクストバンカー』では、大きな変化の真っ只中にある銀行の現状がわかりやすく説明されている。この記事では、それらを参照しながら、『半沢直樹』の世界をちょっと読み解いてみたい。