文部科学省によると、新型コロナウイルスで公立小中高校などを休校とした全国の1794の自治体の教育委員会のうち、1710が夏休みの短縮をするそうです。これは全体の95%。わずか5%にあたる84の自治体の子どもたちだけが、通常の夏休みを過ごすことになります。

元公立小学校の教諭で、現在は探究学舎の講師をつとめる森田太郎さんは、このことに対し疑問を呈します。
「近年、小中学校の夏休みは短くなる傾向でしたが、そのことによって教育効果が上がっているとは思えません。年度初めに授業ができなかったからといって夏休みを短くするのは、単なる数字合わせのように見えます」

13年間公立小学校に勤務し、森田さんが担任になると子どもたちが目を輝かせる不思議から「型破り教師」と言われた森田さんのこの真意はどういうことなのでしょうか。

全国ほとんどの学校が2週間ほど夏休みの短縮を決めている Photo by iStock
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子どもにも先生にも
十分な夏休みが必要な理由

平日に7時間目や土曜授業を増設して、学習を駆け足で詰め込むことも勉強嫌い、学校嫌いを増やすのではないかと感じます。

そして今回、声を大にして言いたいのは、先生たちにも夏休みが必要だということです。例えば、社会科が専門の僕の元同僚は夏休み中、6年生の教科書に出てくる「長篠の戦い」の舞台となる愛知県の古戦場を自らの足で歩いてきました。
実際に自分の目で見て、織田信長と武田勝頼がどのように布陣し、戦ったのかイメージを膨らませながら、授業内容を考えてきたのです。自らの五感を働かせて調べてきた調査の上に成り立つ授業、子どもたちが食いつかないわけがありません。

理科が専門の先生は、秋から始まる授業に向けて無重力体験をするためにセスナ機に乗り込み、機内での様子を撮影してきました。無重力状態の中で、担任の先生の目の前で水が空中に浮いている臨場感あふれる映像に、子どもたちから歓声が上がります。無論、授業に子どもたちが前のめりになるのは、言うまでもありません。

中学校の先生は夏休みも部活動指導があります。ただ、授業がない分、部活指導を終えた後に、授業準備にじっくりと取り組むことができます。僕は夏休みに、中学校でサッカーの指導をしている友人から指導を受けたことがあります。仲間の小学校教師たちも加わり生徒役になって、練習メニューを体験する。すると、そこで学んだ内容が、冬の体育のサッカーの授業でフルに活かせました。
つまり、夏休みの喪失は、先生たちから自由な発想と授業改善にじっくり向き合う時間を奪うことになるのです。