甲子園が日本人にとって「特別」なワケ…高校野球「青春」の黒い裏側

煽る新聞社と古臭い高野連が最大の黒幕
広尾 晃 プロフィール

しかし、その反面、高校野球は過熱する人気によって多くの問題をはらんできた。プロ野球が有望選手の獲得合戦を繰り広げたり、資金力が豊富な私学が有力選手を全国から集めたり、全寮制の野球部寮で暴力事件が発生したり。指導者の暴力沙汰も後を絶たなかった。

昨年には、高校球児の「健康問題」が、大きくクローズアップされた。深刻な障害につながりかねない「登板、投球過多」の問題。酷暑の中での試合強行など、これまで「当たり前」とされてきた高校野球の体質が、スポーツ、教育の観点から改善の余地があるとされたのだ。

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その背景に「一戦必勝」のトーナメント制に起因する「勝利至上主義」があるとも指摘された。スポーツ長の鈴木大地長官も「高校野球には改善の余地がある」と言及した。

日本高野連は「投手の障害予防に関する有識者会議」を招集し「球数制限」などのルールを決めるに至った。

朝日新聞や毎日新聞も、こうした高校野球の問題点について報道している。高校野球の現場で肩肘の障害を軽視した投手の酷使や、罵声罵倒を浴びせる指導者などを目の当たりにして、これを疑問視する記事を書いている。また整形外科医など専門家の警告も取り上げている。

しかしそれらの記事は、スポーツ欄の端っこや社会面に掲載される。はるかに大きなスペースで報道されるのは、相変わらず「青春の汗」であり「熱闘の果ての涙」なのだ。

筆者が知る新聞記者は、ほぼすべて「現在の高校野球には問題がある」という認識を持っている。ひどい指導者に筆者とともに憤る記者もいるが、彼らの意見が大きな記事になることはない。

今も、高校野球は数字が稼げるスポーツコンテンツであり、「甲子園で感動したい」ファンがたくさんいるのだ。そうした熱気に水を差すような記事は、扱いを小さくせざるを得ない。

それに、高校野球を「国民の祭典」にしたのは、全国紙の紙面を使って1世紀にわたって大々的に喧伝してきた新聞社自身なのだ。

「ここまで高校野球人気をあおってきて、今さら“問題あり”とは何事だ」という声を恐れて「高校野球改革」の流れに同調する論調へ全面的に転換することができないのだ。

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