# 香港

香港人が『カードキャプターさくら』に片想いしてる…ってどういうことだ?

香港アイデンティティと作品の関係
銭 俊華 プロフィール

またメイリンの返事のメールの文面で広東語の「下次」(今度)と「今次」(今回)の意味を間違えるミスをしていたり、物語の終盤のメイリンのセリフでも不自然な点が見受けられた。

こんなふうに、「クリアカード編」の広東語の大部分は、物語の文脈から見て不自然で、間違っているが、それでも、Facebook上で多くの香港人は喜んでいた。「広東語はちょっと変だけど、香港らしさを入れてくれたから感謝して大喜びすべきだ」と彼らは思っているのだ。

しかし広東語のミスから考えると、製作陣には、香港の視聴者を喜ばせるという意図はそれほどなく、登場人物の設定に合わせて、日本国内の視聴者向けにちょっと異国らしさを入れることが目的だったのではないかと考えられる。

 

目覚めた香港アイデンティティ

どうして香港の人は『CCさくら』に「片思い」をしていると言えるのだろう。それは、この「片思い」が、政治と社会の変化――中国政府が香港にプレッシャーを強めるようになったこと――と関係しているからだ。

『CCさくら』において、香港は、中国大陸とは区別された「香港」として登場した。シャオランとメイリンは「中国からの転校生」ではなく、「香港からの転校生」であり、中国大陸の中国語(普通話)ではなく広東語と英語を話す「香港人」なのである。この設定と、その関連シーンやセリフは現在の香港人にとっては「香港」という地域を主体的存在として認識してくれるという意味で、きわめてありがたいものなのだ。

「香港人」のなかでも、そうした思いはとくに、私を含めた、『CCさくら』を幼少期に見ていた記憶がある若者に顕著だ。つまり2000年の「クロウカード編」と「さくらカード編」が放送された時にはまだ子供として「さくら」を見ており、2018年の「クリアカード編」の時点ですでに大人になっていた香港人である。中国政府が香港に同化を迫っていることに鬱屈とした思いを抱えるなか、幼少期に愛していたアニメが、香港を、中国大陸と区別した「香港」として描いてくれている、というわけだ。