美人にメッセージを送る際、
気をつけるべきポイント

「美人はありきたりのメッセージじゃ、絶対に返事なんかこないよ。このアプリ、年収5000万だの1億の奴もザラにいるからな。1000万レベルが適当なメッセージ送っても埋もれるだけだ。相手のプロフィールを熟読して、そこから彼女の好きなことや興味のあることを拾って、真剣さや誠実さでアピールしないと」

「……」

冷水を浴びたようで、直彦はしばし言葉を失った。

驕るつもりはないが、29歳・年収1000万の商社マンである自分は間違いなく売り手市場だと思っていた。それなのにアプリの世界では埋もれてしまうというのか?

ただ淳也が最後に言った「彼女の好きなことや興味のあることを拾え」というセリフは直彦をハッとさせた。

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関心を持ってもらいたいなら、まずはこちらが相手に興味を持つこと。

リアルのコミュニケーションなら当たり前のことなのに、アプリの出会いの気軽さでつい配慮を忘れていたと気づかされたのだ。

「すごいな、短期間でアプリの師匠みたいだ」

直彦が尊敬の眼差しを向けると、淳也は「まあな」と胸を張ってみせた。しかしすぐに照れ笑いを浮かべると「実はさ」と言葉を続ける。

「今話したことは全部、アプリマスターとくちゃんっていうTwitter有名人の受け売りなんだ。とくちゃんのアカウント、ノウハウ満載でマジで勉強になるからお前もチェックしたほうがいいぞ」

淳也はしきりに“とくちゃん”の凄さを語っていたが、直彦はTwitterを見ていないため聞き流してしまった。

淳也のアドバイスは確かに有意義だった。しかし一度消えかかったモチベーションが再燃するほどではない。

直彦はSNSの類が苦手なのだ。写真を追加しろだのプロフィール文を書き直せだの言われても正直面倒臭い。

そもそも向いていないのに無理をしてまで続ける価値が、マッチングアプリにあるのだろうか……?

しかし別れ際、淳也が珍しく真面目なトーンでこんなことを言ったのだ。

「工藤はアプリでモテるタイプだと思うぞ。無自覚でムカつくけど、お前って実は正統派のイケメンだし。ちょっと魅せ方を工夫すれば激変するぜ、きっと」