好感度爆上げ間違いなし。
思いもよらぬアプリのモテ技

「どうだ、アプリは順調?」

『築地金だこ』のトリュフ入りたこやきを満足そうに頬張りながら、淳也が直彦に尋ねた。

二人はたった今、仲良く虎ノ門横丁デビューを果たしたところだ。

金曜の夜、在宅勤務を終えたタイミングで淳也から電話があり「ちょっと行ってみようぜ」と半ば無理やり連れてこられた。なるべく混雑を避け閉店間際を狙ったが、話題のスポットだけありデートらしき男女の姿も多い。

「いや……それがさぁ、何人かはマッチングしたんだけど返事がこなくて。そもそもマッチングしないことも多いし、女性からの『いいね』も初日以降はどんどん減ってるし……」

ちょうどその時、腕を絡ませた仲睦まじいカップルが直彦の目の前を通り過ぎた。

より一層虚しさを感じながら事情を説明していると、淳也が何かを思い出したように「なぁ、工藤」と続きを遮った。

「お前、実家で犬飼ってなかった?」

突然、なんの脈略もなくいきなり犬について聞かれたため「へ?」と思わず間の抜けた声が出た。

「……犬?ああ、ビションフリーゼっていう真っ白いのがいるけど」

まるで意図を掴めないまま、直彦は戸惑いながらも質問に答える。

すると淳也は「だよな!」と大げさに喜び、早口でこう続けた。

「正面、全身、横顔がわかる写真の他に、犬と撮った写真もプロフに載せろ。犬好きに悪い奴はいないって言うだろ。犬とのツーショットは女性を安心させる絶大な効果があるんだ。好感度爆上げ間違いなしだぞ」

「ええ? ああ、なるほど……」

淳也の勢いに気圧されながらも、妙に説得力があって思わず頷いてしまう。

「あとお前、長ったらしいプロフ文書いてないか? 男の長文プロフィールはハッキリ言ってキモいぞ。プロフは広告コピーだ。簡潔にシンプルに“らしさ”を伝えないと。元カノと別れてから出会いがなく……とか要らんことも絶対書くなよ。お前のことだから、余計なこと書いてそうで心配だよ」

言いたい放題言われて悔しいが、長文のプロフィール文も元カノのくだりも淳也のダメ出しはすべて図星だった。

「余計なことを言う」という指摘も、7つ年の離れた姉に昔からいつも言われていたことで大いに心当たりがある。

直彦は動揺を隠しつつ「わかった」とだけ答え、気まずさから話題を変えた。

「ちなみに、マッチングしたのにメールの返事がないのはなんでだと思う?」

教えを請いたくなり尋ねると、淳也はニヤリと笑い、もったいぶった口調で「それはな」と語り出した。