アプリの『探す』タブは
見始めたら止まらない「沼」

結局、深夜になってもRumiから返信はなかった。

――まあいい、気にするな。アプリには山ほど女性がいるんだ……!

直彦はそう自分に言い聞かせメッセージ画面を閉じた。冷蔵庫から缶ビールを取り出し、気を取り直して『探す』タブを開く。

つい先日まで「アプリに登録している女性なんて」などと言っていた直彦だが、この『探す』タブはずっと見ていても飽きない。実は昨夜Rumiとマッチングした後も睡魔に襲われるまで延々眺めていた。

先にアプリデビューした小野寺淳也が絶賛していた通り、次から次へ美人が表示されるのでつい夢中になってしまうのだ。

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直近1週間に贈られた花束の数を競う『花束ランキング』は特に興味津々で覗いた。

花束はアプリ内でポイントを購入すると贈ることができるらしい。花の本数により必要なポイントが異なるから、より豪華な花束を贈れば女性に本気度をアピールできるというわけだ。

この夜、ランキングでトップに君臨していたのは『さくら26歳』という女性だった。

オリエンタルな雰囲気を纏った彫りの深い顔立ちで、綺麗に並んだ歯と艶やかな黒髪が目を惹く。彼女は男たちから、なんと4,000本以上の花束を集めていた。

――彼女、何でこんなに人気なんだろう。

確かに美人に違いないが、他の女性と比べて抜きん出て美しいというわけでもないのだ。しかし「そんなに人気なら俺も……」という謎の対抗心が湧き、気づけば『いいね』を押していた。

対面でアプローチするのとは違い、アプリならボタンをタップするだけ。

次第に慣れてきた直彦は、自ら『いいね』を押してアピールすることにほとんど抵抗を感じなくなっていた。

ところがその後3日以上が経っても、さくらとはもちろん、他に『いいね』した20人弱の女性の誰とも進展がなかった。

かろうじて数人はマッチングしたが、Rumiと同じく無反応で先に進まないのだ。

――一体、何がダメなんだ…。

ここまでくると、さすがに自分に非があるのではと心配になる。

足あとに履歴が残っていて、直彦のプロフィールを見たことは間違いないのにスルーしていく女性もいるのだ。

すっかり落ち込み戦意を失った直彦は、次第にアプリを開くのも憂鬱になってしまった。