30歳超えの女が、アプリで探すべき逸材

「馬鹿だな。そこまでハイスペの億男が中身までマトモなわけないだろ」

怒りに任せて事の顛末を一通りぶち撒けると、徳光は呆れた様子でアッサリとそう言ってのけた。

留美は雅人から逃げるようにタクシーに乗り込んだ後、早々に徳光を呼び出し西麻布で飲み直すことにしたのだ。

「あのな、アプリの醍醐味は、アプリでしか出会えない優良物件を探すことだからな?」

「その優良物件っていうのは何なの?勿体ぶらないで教えなさいよ」

「簡単に言うと、スペックは高いのに残念な男が狙い目なんだよ」

留美が詰め寄ると、徳光は得意げに語り始める。

「多少プロフィール文やメッセージがイケてなくても、そこはうまくコミュニケーションを続けて見定めた方がいい。ちなみにアプリで女を簡単に誘える男は、現実世界でも女慣れしてモテる男が多いからな。本気で優良物件を探すなら、女の方からアシストが必要な不器用な男をピックアップするんだ」

「不器用な男なんて、私タイプじゃないんだけど......」

「いや、留美は32歳って年齢を自覚しろよ。その点は億男の意見も聞き入れるべきだぞ?不器用っていうのは、裏を返せば純情なんだ。そういう男を自分の好みに育てるくらいの心意気で探すんだよ」

「............」

留美はシラけた気分になる。

これまではハイスペックで洗練された、いわゆるモテ強者の男としか付き合ったことはない。不器用な男を育てるなんて、あまりに面倒臭そうだ。

「じゃあ試しに、この中から目ぼしい男をとくちゃんが選んでみてよ。私じゃ分らないわ」

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留美はアプリ画面を開いてスマホを手渡す。すると徳光はサクサクと画面をスクロールし、ものの数秒でピタッと指を止めた。

「このナオ29歳って商社マンは良さそうだな。ちょっと頭は固そうだが、なかなかイケメンだし。おそらく掘り出し物だぞ。2通もメールが来てるし、本気度も高そうだ」

「あれ?この人って......」

留美は身を乗り出してスマホを覗き込む。

男の顔には見覚えがある。

彼は数日前、留美が一度目を止めた、韓国俳優・ヒョンビン似の男であった。

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