超ハイスペ男の、危険すぎる結婚観

少々緊張する留美に対し、雅人は慣れた様子でドリンクをオーダーし、ごく自然に世間話を始めた。

アプリのプロフィール欄にある程度の情報は載っていたし、メッセージのやりとりもしているから、初対面でも会話は思ったよりスムーズに進む。

「......で、るみちゃんも結婚願望あるんだよね?」

そしてドリンクを半分ほど飲み二人の空気が落ち着いたところで、雅人は急に核心に触れた。

「え......あ、はい......!」

留美は内心驚きつつも、首を縦に振る。

「どんな暮らしがしたいとか、子供は何人欲しいとか、夫婦関係の理想はある?」

雅人は世間話とトーンを変えないまま、綺麗な顔に薄い笑みを浮かべて留美を見つめる。

「えっと......子どもは欲しいです。夫婦関係は......そうですね、できれば仕事は続けたいので、家事や子育てを協力し合えるのが理想です......」

「ふーん、協力か。俺も子どもは欲しいけど、それは無理だな」

「......え?」

「俺、仕事忙しいからさ。嫁が働くのは止めないけど、家事や子育ては協力できない。シッターくらいなら雇ってあげてもいいけど。それならどう?」

呆気にとられ目を丸くする留美をよそに、雅人は淡々と続ける。

「あと今住んでる赤坂のマンションは去年買ったばかりだから、そこに住んでもらう。2LDK100平米弱の低層マンション。南向き。築30年近いけど管理会社の手入れが良いから、悪くない部屋だよ。あと働きたいなら環境は整えてあげるけど、俺、奥さんに生活費渡すのとか嫌でさ。財布は別だから、そこは期待しないでくれる?」

「え、えっと......」

「じゃあ、とりあえず今からウチ見に行こうか。タクシーですぐだよ」

あまりに一方的な物言いに、頬がピクピクと引きつる。

さらに彼は、絶句する留美の返事も待たずにバーテンダーに真っ黒なクレジットカードを手渡した。

「あ、あの、急に家はちょっと......!まだ初対面ですし……」

留美は焦りながらも、やんわりと遠慮する。しかしその瞬間、雅人の顔から上品な笑顔が消えた。

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「あのさ、留美ちゃん」

氷のように冷たい視線が、留美に突き刺さる。

「ハッキリ言うけど、俺みたいな男に気に入られるのがどれだけ幸運か分かってる?君は美人だけど32歳でしょ?こんなチャンスはそうないし、俺はやることやらないと先は考えない。今断るなら、時間の無駄だからもう会う気はないよ」

「ファイナルアンサー?」とでも言うように自分を強く睨む男に、留美は恐怖すら覚えた。