テクノロジーの進化がもたらした、ドラマチックな出会い

グランドハイアット東京の前にタクシーを乗り付けると、留美は逸る気持ちを抑えてエントランスに降り立った。

どこの施設でもすっかり常識と化した体温チェックとアルコール消毒を済ませ、姿勢を正してロビーを横切る。

今夜はとうとう、初めてアプリを通して「Masa」という男と会うのだ。

あれから多くの男たちとメッセージのやりとりを試みたが、その中でもMasaは断トツに好印象だった。

アプリを通してのメッセージは、どうしても他人行儀感が出たり、よそよそしさが隠せなかったりする。

そんな中で、『雅人です。よろしくお願いします。3枚目の写真はベガスのプールですか?』と、見事に留美のプロフィール写真の旅行先を言い当てたMasaは、シンプルな文面ながらもテンポよく会話が続き、あっという間にデートの約束をしてしまったのだ。

彼のプロフィールには「結婚はすぐにでもしたい」とあったし、留美の婚活は早々に終わりを迎えてしまうかもしれない。

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春前に購入したボッテガ・ヴェネタの新作サンダルのヒールを鳴らし、オークドアのバーエリアに辿り着く。

するとそこには、写真よりもさらに綺麗な顔をした男がいた。切れ長の目に、高い鼻梁、血色の良い唇からは真っ白な歯が上品に覗いている。

背も180センチ近くありそうで、仕立ての良さそうなスーツを着た雅人は、文句なしに一流の男だ。

――まさか、アプリでこんな人に出会えるなんて……。

留美はI Tテクノロジーの進化に驚嘆せずにはいられない。たかがマッチングアプリを数日いじっただけで、実際に目の前に王子様のような男が現れたのだ。

「るみちゃん?写真より美人だね」

唇の端を少し持ち上げて微笑んだ雅人に、留美はしばし見惚れた。