“カモ”にされるアプリ界の男

『美しい写真に一目惚れしました。真剣に結婚相手を探しており、遊びや軽い気持ちではありません。どうか、お願いいたします』

男とはまだマッチングしていないが、相当な課金ユーザーであるのか、1日に3通ものメッセージを送ってきただけでなく、100本の花束もくれた。

年齢は47歳とかなり年上だが、外見はそう悪くなさそうだ。何より、海外のリゾートや高級車が並ぶ写真は留美の心をくすぐった。

これほど熱心にアプローチしてくれるのならば、とりあえずマッチングしてあげても良いかもしれない。

留美はニンマリと微笑みながら、『ありがとう』のボタンを押した。

『承認ありがとうございます。Rumiさんのような美しい方に出会え、夢のようです。僕は結婚を前提とした交際を希望しており......』

マッチングを承認した途端、男は非常に熱量の高いメッセージを寄越した。

『仕事に人生を注いでいたら、うっかり年をとっていました。しかしおかげで、コロナ危機でも余裕のある生活は送れますのでご安心ください。Rumiさんにとって、私の年齢や外見は恋愛対象になりますか?』

まだ会ったこともない、声を聞いたこともない、写真を見ただけの女にここまで言い寄るとは驚きである。

留美は及び腰になりつつも、返信を試みる。

『まだアプリに慣れておらず、ちょっと分からないです……すみません』

『そうでしたか。失礼しました。ここからは私の頑張り次第ですので、精一杯努力します。私もアプリで出会った女性から「生活費に困っている」と相談されたことが何度かあります。もちろん丁重にお断りしました。私は真剣ですので、どうか信じてください』

即返信の長文メッセージに、留美は目を丸くする。

――アプリの女からお金をせびられたの!?でもこの男、自分で金目当ての女を引き寄せてるわよね......。

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男には同情するが、写真だけで一目惚れ、財力をアピールしつつ低姿勢で近づこうものなら、いわゆる“パパ活女”のカモにされるのは当然である。

留美はH.Nとのメッセージ画面を閉じると、気を取り直して再び男たちの物色に励む。

それにしても、世の中にこれほど多くの男が存在するとは改めて驚きである。

学生時代から多くの出会いを経験してきたし、20代後半のピーク時には毎晩……いや、一晩に2、3件の飲み会をハシゴしたこともある。

それゆえ東京中の男と出会い尽くした気でいたが、マッチングアプリの中には、その人数をはるかに超える男たちが存在するのだ。

――この人、イイかも......!!

そうして留美が指を止めたスマホの画面には、『Masa 38歳 外資金融 年収1億以上』という輝かしいステータスと共に、伊藤英明を思わせるスマートで美しい男の顔があった。