「自殺したい…」は誰にでも起こる。死にたい時はお電話ください

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坂口 恭平 プロフィール

電話に対応できない人のために

話をしていくうちに一番強く感じたことが、この「自分だけではない」ということです。電話をかけてきた死にたい人の思考回路は、僕が死にたい時に非常によく似ています。

ということは、この状態は死ぬまで続くのではなく、必ずやまた抜け出して、健やかに過ごすことができるんです。またぶり返すかもしれません。

でも、練習を積んでいくことで、どん底には落ちずに済むようになります。うまく体を休ませる方法を見つけ出していけば、死にたい気持ちもまた、一つの体のサインだと実感できるはずです。

僕も少しずつですが、そう思えるようになってきました。

だからこそ、一人で抱えずに、できるだけ気楽に(死にたい時は気楽に何かをすることができませんが)、「いのっちの電話」にかけてきてほしいと思っているのです。

 

たくさんの電話がかかってきて、「お前の生活は問題ないのか?」と質問される方もいます。これまで、僕自身の鬱状態がひどい時以外であれば電話に出て、一人30分くらい話してきましたが、それ自体はそこまでストレスにはなっていません。

むしろ、これは先ほど書いたように、僕のためになっているところも大いにあると思います。

もちろん、1年に何万人もの電話を受けることはできません。僕にできるのは1日に10人が限界だと思います。

(しかし本当は、「いのっちの電話」に本腰を入れて、医師みたいに9時から5時までずっと電話に集中して、他のスタッフも入れて、夜勤でも働いてもらって、24時間体制の自殺防止センターをつくりたいなんて妄想を抱いています)

そこで、いつも電話で話していることを本に書いてみることで、電話だけでは対応できない人々にも、死ななくてもいいんだと感じてもらえるのではないか。

そんな気持ちから『苦しい時は電話して』を書くことにしました。

ごく普通の方々も救いたい

何度も言うように、死にたくなるのは誰にでも起こりうることです。

新型コロナウイルスが世界を席巻し、数多くの人々が亡くなっています。ウイルスとの戦いは長期間にわたりますが、経済活動が元のように戻っていくのにもまた、多くの時間を要するでしょう。

その間、日本では、たとえば経営に行き詰まった中小企業の関係者や飲食業に携わる人たち、アルバイト先がなく学費の払えない学生など、ウイルスに体を冒されて亡くなる数以上の方々が、思い悩み、人生に絶望し、自らの命を絶ってしまう恐れがあります。

でも、命を絶つ前にちょっと待ってほしい──この本が、決して躁鬱病というわけではないけれど、誰も頼る人がいなかったり、生活に困窮したりして死にたくなっているような、ごくごく普通の方々の助けにもなれば嬉しいです。

やっぱり僕の夢は、自殺者をゼロにすることです。

それはまた僕自身が自殺せずに、寿命を全うしたいということでもあります。

荒唐無稽なことを言っているように聞こえるかもしれません。

でも僕には確信があります。

死にたいと思っていることを口に出すことができて、他人にそれを聞いてもらえたら、誰も自殺することはないはずだ、と。

死にたいと思うこと自体はきついですが、悪いことでも何でもなく、誰もが感じる当然の感情なのです。死にたいと思うことは何一つおかしなことじゃありません。

僕にとっては日常であり、はっきり言うと、それは必要なことでもあります。

死にたいと感じたら、どんどんそのことを話し合える世の中になれば、もっと楽しくなるのではないか。ふとそんなことも考えます。

とはいえ、これを読んでいる人の多くは、今、死にたいと感じている、緊急事態かもしれません。

早速、対処の仕方を一緒に考えてみましょう。

ここまで読んできて、「もうダメかも……」と思う人はぜひ、09081064666に電話をかけてみてください。

それでははじめましょう。

苦しい時は電話して』(講談社現代新書)「はじめに」より

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