坂口恭平『苦しい時は電話して』(講談社現代新書・8月19日発売)

「自殺したい…」は誰にでも起こる。死にたい時はお電話ください

090-8106-4666坂口恭平へ
作家の坂口恭平さんが、自らの携帯電話番号を公開し、死にたい人であれば誰でも相談に乗ってから、もう10年が経ちます。その経験を生かした新刊『苦しい時は電話して』(8月19日発売)では、「死にたくなったらどうすればよいのか?」を優しく綴りました。自殺者をゼロにしたい、という夢をもつ坂口さんは「死にたくなるのは誰にでも起こる」と語ります。

090-8106-4666

これは僕の携帯電話の番号です。

僕は「いのっちの電話」という、死にたい人であれば誰でもかけることができる電話サービスをやっています。もちろん無償です。

本家本元「いのちの電話」がほとんどつながらないという現状を知り、2012年に一人で勝手にはじめました。1日に7人ほどかけてきますので、1年だと2000人を超えます。もう10年近くやっています。

 

なんでこんなことをはじめたのか。

なぜなら、自殺者をゼロにしたいと思っているからです。

毎年、自殺者の数が公表されています。僕がサービスをはじめた当初は3万人を超えていました。それだけの数の自殺者がいる国は、果たして国として成立していると言えるのだろうか?

そんなことも考え、僕は新政府なるものを立ち上げたこともあるのですが、そのことは、この講談社現代新書シリーズの『独立国家のつくりかた』を読んでもらうことにして今回は割愛します。

文句を言っても仕方がない、何か手を打たないと、と思った僕は「いのっちの電話」をはじめました。

自殺者がいることが当たり前になってしまっている。そのこと自体が異常なのではないかと僕は思います。

もちろん、それぞれの人生はそれぞれに決めることができるので、自ら死にたい人を止めようとするのはどうなのか、それも人間の自由ではないか、と思われる方もいると思います。

僕も何度かそう言われたことがあります。その意見もわからないわけではありません。

いや、どうかな……やっぱり納得できないところがたくさんあります。

なぜなら僕自身も死にたくなるからです。

まっすぐどん底に向かっていく

僕は、医師からは躁鬱病(現在では双極性障害II型と呼ばれている)という診断を受けています。

躁鬱病は周期的に気分が良くなりすぎたり、悪くなりすぎたりを繰り返します。躁状態の時は、とにかく何もかもが爽快で、可能性に満ち溢れているように感じます。いろんな考えが頭をよぎり、それをすぐにでも実行したいという興奮に包まれます。

しかし、その期間はそれほど長くは続かず、しかもその後は穏やかな精神状態に戻るわけではなく、一気に下降していきます。そのまままっすぐどん底に向かっていきます。そして鬱状態がはじまります。

躁状態の時は確かに爽快ですが、かなり常軌を逸しているのです。楽天的な精神状態で、調子が悪いと判断することは難しく、病院に行こうなどとは思えません。

その時に使い果たしたエネルギーを、充電する必要があるのでしょう。鬱状態になると、途端に活動が鈍くなります。考えることはできず、好奇心も湧かず、人にも会えません。時間がゆっくりと進み、しかも毎秒のように苦痛が襲いかかってきます。

時間がゆっくり進むので、とても大変です。しかも、躁状態の時と鬱状態の時は、記憶が完全に分断されてしまいます。治ればまた元気になるとは考えることができず、もうこのままなのだ、一生深く沈んだまま生きていくのだ、と断定してしまいます。

そんなわけで当然のように、こんなことならもう死にたい、と思ってしまうのです。