20年以上続く人気の理由は…

伊藤理佐さんの短編漫画『おいピータン!!』は、主人公の「ある事情」で『おいおいピータン!!』とタイトルを変え、20年以上「Kiss」にて連載が続いている人気作。手塚治虫短編賞など多くの漫画賞も受賞している名作だ。

人気の秘密は「食」を中心として、誰にとっても覚えのある「あるある」がリアルに、しかし笑い飛ばせるように描かれていること。時に切なく、時にほっこりしながら、「げ、私これと同じ嫌なことやっちゃってる」「うわー、私も同じことあったよー!」と共感しまくれるのである。

そんな『おいピータン!!』からランダムに選び、試し読みとともにそこに描かれた「あるある」を分析している連載「おいピータン!!人間学」。今回のテーマはお中元の季節にふさわしく「実はもらって困った贈り物」だ。

文/FRaU編集部

おいピータン!!人間学」今までの記事はこちら

実は「いただいて困っているもの」

お中元やお歳暮の季節。「一度送ったら贈り続ける」ことが礼儀とされているし、学校の先生は保護者からものをもらってはいけない規定になったことを受け、昭和の時代には夏にCMで必ず見られた「お中元は○○」「お世話になったあの方へ」も見なくなった。それでも感謝の気持ちを贈り贈られるのは、心が通うものだし、何を選ぼうかとワクワクするのも楽しい。大切なときに利用したいものだ。

といいつつ、実は筆者は「またいただいてしまった」と感じているものがある。

それは珍しい果物のミックスジュースの詰め合わせで、購入したら高いであろうことは間違いがない。

我が家ではジュースが常に冷蔵庫に入っていることはなくて、冷蔵庫の中の飲料と言えば麦茶と牛乳、R-1、そして酒類だ。ときどき子どもたちの友達が遊びにきたときにはカルピスや三ツ矢サイダー、りんごジュースが加わる感じで、こんな高級なジュースは初めてだった。

いただいた初めての年、味を確認した上でお礼をお伝えしようと、すぐに冷蔵庫に入れた。そして子どもたちに「すごいジュースをいただいたよ! 飲んでみよう!」と一緒に飲んでみた。

好きな人からしたらそれは大喜びのものでも、好きでない人からしたら難しい Photo by iStock

ところが、家族全員、それぞれひと口飲んで終わってしまったのである。もちろん美味しいか不味いかというと美味しい。高級だと思う。でも……。
結局ひと夏冷蔵庫に入れて粘ってみたが、最初にあけた4本以外なくなることがなく、友人たちが遊びに来た時に出してみたがなかなか減らなかった。

やんわりお断りしても伝わらない

しかしいただいてすぐにお礼をお伝えしなければならない。まずは「贈り物をいただきありがとうございます」と書いた。そして悩みに悩んだ挙句、「実は我が家であまりジュースを飲む習慣がなく、こんなに素敵なものはもったいないです。お気持ちだけで充分です。ありがとうございます」と添えてみた。

これで、わかっていただけるはず……。

しかしその返信で、私は衝撃を受けた。
「あのジュースは美味しいから、普段飲んでない人でも美味しく飲めたでしょう」
とあったのだ。

なにも伝わってない……!

絶対的な自信をもって贈ってくださっているのだろう。
お気持ちはありがたい。でも……。
それから数年経つが、毎年重たい箱が届く。毎年表現を考えてお礼がてらやんわり意思を伝えてみるのだが、「こんな素晴らしいものの良さがわからない我々が悪いのか」と後ろめたさまで感じる。

これ、もしパートナーの実家からだったら、とてもお世話になっている近しい方だったら、みなさんどうなさるだろうか。

『おいピータン!!』11巻1話の「ツルツル」は、夫の実家から毎年夏になると届く「贈り物」を題材にした物語だ。ただ、主人公の夫の実家の名誉のためにお伝えすると、筆者にとってのジュースのようなものとは全く違う。「中身は嬉しいけど困る荷物」なのだ。そして、「困ると思いながらも、困るといって行動したことでいいこともある」という「ものごとっていい悪いで簡単に割り切れないものよのう」ということを教えてくれるのである。

そういえば、じゃあ視点を変えて会社に持参して飲んでもらおうとしたことを思い出した。
しかし缶がめっちゃ重たくて、二回目以降運ぶのを断念したのだった……。