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量子力学は、アインシュタインも認めた"因果律"を破れるか

時間の矢が逆方向に放たれる可能性

時間は人類にとっていちばん身近で、あたりまえなものの一つです。にもかかわらず、時間は古くから人類にとって、最もわからないものの一つでした。「時間とは何か」、それは神様が知的生命に与えた最大級の謎といえます。

この謎に挑むべく、一緒に思考の旅に出かけましょう。

『時間は逆戻りするのか』はじめに より

自然界の多くは対称性をもっているのに、なぜ時間は一方向にしか流れないのか? 古来、物理学者たちを悩ませてきた究極の問い。ケンブリッジ大学宇宙理論センターでホーキング博士に師事し、薫陶を受けた若き物理学者が、理論物理学の最新知見をを駆使して、この難問に挑む思考の旅へと発ちました。

今回は、20世紀物理学の革命量子力学の登場で、時間に対する考え方がどう変化したかを訪ねる旅です。私たちの日常の感覚ではおよそ考えられないような、ウソでしょ? というお話満載の量子世界。それが前回で取り上げられたアイシュタインの因果律とどう対峙するのでしょうか?

 

20世紀物理学の、もう1つの革命「量子力学」とは

先日の記事で、アインシュタインの思考を訪ねて、彼が「時間は過去から未来へと一方向に進んでいる」という考えに至った道程を辿ってみました。そこで、「時間は逆戻りするのか」「なぜ一方向に進むのか」という命題を抱えた私は、過去という原因が未来という結果を成す、という時間の因果律に通せんぼされてしまいました。

しかし、私は「奥の手」があることに気づいたのです。

因果律が私たちに「時間の矢」を射かけてきて邪魔をするのは、光が過去から未来への一方向だけに進むものと考えたからです。もしも、逆に未来から過去に向かって飛ぶ光があれば、因果律とも矛盾せず、時間が逆戻りする可能性が開かれてきます。

相対性理論に続いて、20世紀の物理学に起きたもう1つの革命、それが量子力学です。すべての物質はどんどん分割していくと、細かい粒子に分けられていきます。粒子のことを「量子」とも呼びます。そして最終的には、「素粒子」と呼ばれる最小の粒子が姿を現します。量子力学の世界はここから始まります。

素粒子は、粒子と波の性質を同時に兼ねそなえていて、そうした性質が「ものをすり抜ける」「同時に2つの場所に存在できる」などの現象を同時に起こすことができます。SFみたいな話ですが、いずれも実際に自然界で起きていて、科学的に確認されている現象なのです。

【CG】素粒子は、粒子と波の性質を同時に兼ねそなえている素粒子は、粒子と波の性質を同時に兼ねそなえている photo by gettyimages

たとえば、ものをすり抜けるとは、障害物が,あってもその向こう側にまわり込んで進める「回折」という性質があるからです。壁を通り抜ける電波や音をイメージしていただくと良いでしょう。