近所を散歩していたら、背がすっかり高くなったヒマワリが太陽に向かって咲いていた。畑ではナスやトマトなどの夏の野菜が育っている。スーパーにも、モモやスイカといったみずみずしい旬の果物が並ぶ。
いつもより少し静かな今年の夏は、そんな植物の圧倒的な生命力に心を揺さぶられる。
考えてみると、ヒマワリも、ナスもトマトも、モモもスイカもすべて被子植物だ。中学校の理科では「種子植物のうち、胚珠が子房にくるまれているもの」と習うが、英語では「Flowering plant」(花が咲く植物)とわかりやすい(科学用語としては「angiosperm」という)。
ナスやトマトだけでない。イネやコムギも被子植物だ。わたしたちの食卓は被子植物なしではなりたたない。
身の回りに被子植物が多いと感じるのは気のせいではない。世界中の植物種の90%が被子植物だという。数にして30万種から40万種だ。
被子植物は化石記録などから、白亜紀初期の1億3000万年前ころに地球上に登場したと考えられている。白亜紀といえば、恐竜などの爬虫類の全盛期だ。
オーストラリアとメキシコの研究チームは7月6日に、現存する被子植物の進化の道のりを示す「系統樹」をネイチャーの姉妹誌で発表した※1。 全部で435ある被子植物の「科」の完全な系統樹はこれが初めてだという。
円の周囲にあるのが、現存する被子植物の全435科だ。そのDNAを比較して、それぞれの科が進化の中でどのくらい近縁にあるかを調べた。過去に向かって進化の流れをさかのぼると、枝が少しずつ合流しながら円の中心に向かい、最後には被子植物の共通の祖先にたどり着く。
ただし、これはまだ「科」のレベルなので、たとえばイチゴもサクラも同じ「バラ科」になってしまう。この系統樹がさらに細かく分かれた先に、私たちが目にしている花があり、果実がある。
冷蔵庫で冷えているトマトの遠い先祖をたどっていけば、恐竜がいた時代までさかのぼれる。そう考えると、夕食のサラダの味もちょっと違ってくる気がする。