3歳女児放置死の悲劇… 「自己責任化」された施設出身者が味わう現実

この国には何重ものケアが不足している
安發 明子 プロフィール

先のLabacheらの研究では、施設出身者には借りの気持ちがあるからこそ、義務のように「自分も人に与えられるようにならなければ」と考える人も多く、実際他人をケアする職業、困難な状況にいる人を助ける仕事に就く人が多いことがわかっている。

施設出身者支援組織のホームページより

支援組織は支援者縁組機関と協業しているところもあり、支援者縁組機関が施設出身の若者1人に支援者1人を縁組し、ボランティアである支援者が仕事探しだけではなく「社会的親」として継続して相談にのる。

日本での「職親」にも近いが、職業人生だけではなく血のつながりはないが親戚のような長い関わりを重視するスタイルだ。

これだけ心のケアに力を入れて本人が力を発揮できるようにしているのも、生きていくための道具を持って卒業できるようにしているのも、福祉とつなぐ役割として支援組織を作っているのも、困難な経験をしたり傷ついた子どもを支えることは簡単なことではないからである。

だからこそフランスは予防に力を入れリスクを防ぎ、困難を経験した子どもにはその次の世代も見越してケアしようとしている。

困難な状況で生きざるを得ない人たちがいるという現実を認め対策を用意することと、「少数なのではないか」と自助努力・自己責任を押し付けるのとでは国としてのスタンスは大きく違う。

 
注:セーヌ・サン・ドニ県の児童養護施設での3年間の長期観察、その他にセーヌ・サン・ドニ県とパリ市の児童相談所、施設出身者支援組織、支援者縁組機関等での調査を元に書いている。制度の運用面が他県、他団体では異なる場合がある。
引用:
https://www.tokyo-np.co.jp/article/41827
https://www.tokyo-np.co.jp/article/36049
パリ市児童相談所出身者の支援組織
https://www.adepape75.com/
支援者縁組機関
「社会的養育の推進に向けて」令和2年4月厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課
Françoise Dolto, 1985, La cause des enfants.
Labache Lucette, Mihai Dinu Gheorghiu, 2009, « Les anciens de l’ASE de Seine-Saint-Denis: Profils de vie après la sortie du dispositif de protection », Caisse nationale d’allocations familiales, Informations sociales, 2009/6 n.156, p.92-99.
Isabelle Lacroix, 2016, « Les associations d’anciens placés : des intermédiaires dans l’accès aux droits sociaux des jeunes sortant de la protection de l’enfance », Agora débats/jeunesse, 2016/3 n.74, p.89-100.