3歳女児放置死の悲劇… 「自己責任化」された施設出身者が味わう現実

この国には何重ものケアが不足している
安發 明子 プロフィール

(3)支援組織が足りていない

助けを求めなかった母親が悪いと言うだけでなく、実際助けを求めやすい環境かどうかの検証も必要だ。

日本でもフランスでも施設を出るとき「二度と福祉のお世話にはならない」と宣言する人はいる。フランスの社会学者Labacheらによる研究では出身者の多くに「人生を救ってくれた人たちに対し大きな借りがある気持ちがある」としている。

施設出身者と福祉をつなぐ仕組みは十分だろうか。日本では施設出身者の支援組織は多くない。

それなのに施設出身者のぶつかる現実は簡単ではない。

私は生活保護の仕事をしている中で地域の不動産屋と知り合い、独居高齢者が亡くなった安いアパートを家具電化製品つきで敷金などなしで融通してもらい施設出身者で住居のない人に繋いだりしていたが、体系的な支援がなかったからこそ見つけた方法だった。

退所後1年以内に就職者の半数が転職又は退職を経験しているという調査結果を報告している県もある。私も、施設出身者が職場で計算の合わないお金の責任を押し付けられたり、給料からペナルティを引かれたり、結果的に最低賃金以下で働かされているなど相談を受けてきた。

 

フランスでは施設出身者の支援機関を各県に設置している。そこでは二つの役割を担っている。一つは政策決定側に施設入所者や出身者の声を代弁すること、もう一つは出身者や入所者を福祉につなぐことである。

フランスでは1943年に施設出身者や養子として育った人専門の支援組織を各県に作ることが法律で定められた。3ヵ月以上児童相談所のフォローを受けた人であれば生涯困ったときに助けを求めることができる。加盟者が3万人を数える。

公的資金がほとんどであるところや参加者の寄付や遺産や不動産の提供が多いところなど財源はそれぞれで、支援の内容も県により違いがあるが、国と県から合わせて日本円にして年間3億2千万円の活動資金を受け取っているところもある。

セーヌ・サン・ドニ県の支援組織は職員が38人で全員ソーシャルワーカーの資格を持っている。102軒の住居を持ち月収入が6万円以下の人には月3000円の家賃で提供。その間に自立支援をおこない、精神的ケアも提供している。

その他にも自立支援プログラムを用意し、精神的肉体的健康回復、金銭管理や借金の整理、就労支援、返済不要の奨学金の手続き、法律問題の解決などをサポートしている。ここの職員が付き添ってその人が受けられる諸々のサービスにつないでいる。

パリ市の支援組織では施設出身者同士知り合う機会を多くもうけ、友達同士のようなネットワークで助け合い、施設出身者で現在児童福祉の分野で専門家として働いているスタッフがコーディネーターとして困難な状況にある人を福祉につなぐ支援をしている。