3歳女児放置死の悲劇… 「自己責任化」された施設出身者が味わう現実

この国には何重ものケアが不足している
安發 明子 プロフィール

フランスでは心のケアを優先した上で自分自身の人生を築く準備ができたら「どれだけたくさんの道具を持たせるか」「社会的資源をどう増やしていくか」ということが施設や里親、児童相談所職員にとっての議論のテーマとなる。

フランスは学費がほぼ無料、大学でも収入があっても年間3万円程度、職業専門学校も無料のところが多いのは公平性という点で大きな価値がある。さらに25歳までは生活費の保障をもらいながら職業訓練を受けたり、給料をもらいながら資格を身につける方法もある。学業やキャリアという点では若いうちは特に不公平が少ない。

さらに社会的養護では、親が与えられなかったことを与え困難な環境の中で生きていくための力を身につけられるよう多くの機会を作る。

ある15歳の男の子は個別指導で通信制高校の卒業資格が得られる学校に通い、習いたかったタイボクシングを習い、ゲーム依存気味だったのでゲーム制作会社に毎週通ってゲームのプログラミングを学びプロたちに認められ、アニメ好きだったので日本に3週間ホームステイしてその間日本のフリースクールに通わせてもらった。

そのように本人のしたいことを実現させていく中で、人を信頼したり頼ることを覚え、挑戦をして自信をつけ、生きることへの肯定的な気持ちを育てようとする。生きる力をつけるため個別に支援し、特に頼れる人、資格、職業経験、自尊心を獲得してから送りだすことにこだわっている。

それでも途中で飛び出してしまったり、犯罪組織に勧誘されたりすることもあり、困難な経験をしてきた子どもたちの育ちを支えるのは簡単なことではない。フランスではホームレスの2割は施設出身者だったという調査結果もあり、毎年当事者や児童福祉関係者たちが取り組みの改善と予算拡大を求めている。

国では戦略として政策決定の場に出身者や当事者を参加させることを定めており、国や県だけでなく各施設の方針会議にも施設出身者や当事者が役員として参加している。

国会で児童相談所出身者がアドバイザーとして意見を言うのがテレビ中継される。写真の若者は自叙伝も出版しメディア露出も多いが、自身も若者たちを支援する職業に就いている
 

放置死させてしまった母親は十分な道具を持っていなかった上、彼女が出て行った社会は所得が高くなく頼れる人もいない母子を十分に支えることができなかった。

保育園退所や離婚も子どもと親の状況を確認する機会とすることができる。

フランスは裁判によってしか離婚できず共同親権なので、裁判の際に専門家が父母それぞれの育児能力を判断した上で育児の分担を決めたり、経済状況についても確認できる。暴力など問題がなければ父親も育児に参加する。保育も給料の約1割の金額で受けられ特に片親家庭は優先的に利用できることなどの配慮もある。保育園に入れてもすぐに働かず資格取得を勧める傾向もある。

母親のことを「おかしい」という報道もあるが、自分が同じ境遇だったらと想像するととてつもなく大変な環境ではないだろうか。