3歳女児放置死の悲劇… 「自己責任化」された施設出身者が味わう現実

この国には何重ものケアが不足している
安發 明子 プロフィール

(1)心のケア

日本の社会的養護の現場では長い間小児精神科医や小児専門心理士によるケアが十分おこなわれてこなかった。専門家の数も限られている上、親の了解が得られなかったり、他の子どもたちから特別な目で見られないようにという配慮で二の足を踏んでいる施設もあった。

フランスでは1900年代を生きた精神分析家フランソワーズ・ドルトが今でも児童福祉の現場に大きな影響を与えている。

その考え方とは、例えばまわりの人とトラブルを起こしやすい、取り組みが長続きしないなどの症状があるとしたら、それは幼かった頃の経験が解決していないためであり、話すことで辛かった経験を思い出し、言語化することでその封印していた気持ちを表出することができ、ケアしていけるとしている。

児童福祉施設で働く心理士は子どもがした経験を説明し感情を表出することの重要性も強調する。それぞれ子どもにとって重い経験をして施設に来ている。泣いたり怒ったり感情の浮き沈みを経験する子どもよりも、いつも笑顔で過ごしている子どもの方が心配は大きいと言う。

親と離れて暮らすようになった事情や暴力の経験など、子どもが傷を感じる思い出や疑問のままであることについて、子どもにはそれが起きた理由を時には親も交え一緒に考え、子どもが自分の言葉で気持ちや感情を表現できないと、子どもは大人を信用しなくなり頼らなくなる。

 

フランスの児童養護施設では子どもへの教育サポートと心理ケア、そして親の支援が3つの柱とされている。

週2回の心理士との面談を設けていたり、心理士が一緒に絵を描くアクティビティをしたり一緒に旅行するなどの活動を通じて子どもたちは自分の過去や現在に向き合う機会が多く設けられている。

自分の身に起きたことを理解し、現実を受け入れたら、次のステップとして自分の未来を築き始めることができ、親以外の大人から差し伸べられた手も受け取れるようになるという考えである。

なので、日本の施設の子どもたちがおとなしく我慢強いのに対して、フランスの子どもは怒鳴ったり叫んだり物に当たったり感情的で驚く場面がある。

私自身も最初は問題なく過ごせているのであれば、過去を掘り起こす必要はないのではないかと思っていた。心理士を交え、虐待した親が親自身の幼少期から歴史を遡って子どもが施設に来るまでを話すのは子どもにとって重すぎるのではないかとも心配した。

しかし、心の整理がつくとみるみる成績をあげ、すっきりした顔になっていく子どもを見る機会がある。「こわごわ歩いていたのが、自分でバンバン踏みしめて歩けるようになった」と言う子どももいた。心理士によると、本人の可能性を引き出すだけでなく、その子ども、孫の世代が幸せに生きられるためにもケアしておくことが重要であると言う。

逆に言えば、トラウマを治療せず、生い立ちに関する疑問に答えず努力だけするよう子どもに言うのは無理があるということである。精神医学、心理学、脳科学の分野で得られた知識を、特別ケアを要する社会的養護の子どもたちに生かそうという考えがある。