今から数年前。あるきっかけで知り合った年上男性とデートをすることになった。
彼は初対面からとても人懐っこい笑顔を見せる人で、物腰も柔らかく、優しさを絵に描いたような人だった。決してお洒落でもイケメンでもなく、正直に言うと外見はタイプから外れていたのだが、その実直そうな雰囲気にすぐに惹かれた。

整形をしてゲイ風俗で働き、外見への執念や性的価値という点でしか自分の価値を意識してこなかった同性愛者の僕にとって、これは非常に新鮮な出会いだった。外見に惹かれるのではなく、滲み出る人となりに対してときめくという初めての体験だったからだ。

彼の言動に漂う、ある違和感

ただ、初対面から数時間後、彼の言動に少し違和感を覚えた。二人でコンビニに入った時に店内でジュースを選んでいると、彼がこう言ったのだ。

「俺がおごるよ! でも今回だけね」

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一つ言っておくと、僕は当時30歳になって間もない頃で、相手はアラフォーだった。
たとえ男性同士でも、それくらいの年齢差があったら多少は多く払ってほしい。ただ、たかだか100円程度の商品を「今回だけね」と恩着せがましくおごられたいとは思わない。

この人はデートの相手に毎回おごりながらも、その後いつも進展のないまま終わってきた人なのかも。と一瞬感じたが、その時点ではまだ彼の笑顔のほうが眩しく、そこまで気にはしなかった。

コンビニを出た後も、彼とはドライブをしつつ楽しい時間を過ごした。でも、初デートなのに、彼は交際すること前提で将来の話などを勝手に語りはじめた。正直まだ付き合うと決めたわけでもなかったので焦燥感を抱いたが、彼のことをもっとちゃんと知って好きになったら僕も同じ熱量で向き合えるかもしれないと思い、その日は笑顔で別れた。翌週また会う約束をして。

そして約束通り再び会うと、彼はすでにもう恋人気分でおり、前回より明らかにスキンシップが増えた。将来の約束もどんどん話すようになっており、少し引いている自分がいた。

何より嫌だったのは、勝手に名前を呼び捨てにされること。距離の取り方に違和感を感じた僕は、少ししてからお付き合いはできないという旨を伝えた。ただ友達としてなら、仲良くできるかも。この時はまだそう思っていた。