例年多くのムスリムが巡礼に訪れるメッカは、コロナ禍でどうなる?(photo by iStock)

新型コロナ危機と人類の文明と――パンデミックから見る世界の文化

コロナの時代に「文化」はどうなるのか
新型コロナ・ウイルスのパンデミックは、全世界的な危機となりました。人と人との接触が「リスク」と考えられるようになったことで、各地のさまざまな文化的慣習も見直しを余儀なくされています。
5つの文字世界の比較によって世界史を描き出す『文字世界で読む文明論 比較人類史七つの視点』が刊行されたばかりの鈴木董氏が、パンデミックと人類の文明・文化の関係を論じます。
(本稿は、6月25日発売の雑誌『本』7月号に掲載されたものです。)

「歴史の終わり」からパンデミックへ

20世紀末には、「東西冷戦」も終焉し、平穏極まる「歴史の終わり」が訪れるとさえいわれた。しかし、新世紀に入り20年にして、急迫の危機を迎えた。新型コロナ・ウイルスの出現である。

それはわずか数ヵ月のあいだに、全地球上の人類諸社会を巻き込むパンデミックと化した。世界がグローバリゼーションの急速な進展によって、緊密に統合された効果が、人類にとってマイナスの方向で如実に示されたのである。

 

新型コロナ・ウイルスのパンデミック化は、発展の限界まで達しつつあるかにみえた人類の文明が、意外に脆いものであることを白日の下にさらした。

自他共に許す現代文明の最先端、アメリカ合衆国が、ほとんどなす術もなく世界最大の感染国となり、6月に入り感染者数は200万人に迫り、この先まだどれだけ増加するのか見通しもつかない状況に陥っている。

しかも、この状況に対し、ワクチンはおろか、薬効の確実な特効薬さえなく、大統領自らが、消毒薬が効くかもなどと口走り、専門家たちを慌てさせている。

人類は、危機を想定しようとしてこなかった

考えてみると、現代文明は、すでに炭酸ガスの大量発生による気候温暖化問題をひきおこしていた。これに対しても、炭酸ガス排出を抑え、ダブつく炭酸ガスを集めて地中に密閉しては、などという微温的な対応が提示されているにすぎない。

国連気候行動サミットで、並みいる各国要人が高校生の一少女に、「永遠の経済成長というおとぎ話」しか語らないと糾弾される始末である。

国連で気候変動に警鐘を鳴らすグレタ・トゥーンベリさん(photo by gettyimages)

パンデミック到来の危険性も、2年前から警告されていた。気候温暖化については、それよりはるか以前に警鐘が鳴らされていた。決して「想定外」だったわけではない。「エライ」人たちが想定しようとしなかったのである。

東日本大震災による大津波もそうである。その2年前に地震学者が、かつて貞観地震があり大津波が生じていたと警告したが、東電当局は「千年に一度の歴史上のことなど」と、思ったのであろう、対策を取ろうとしなかったと伝えられる。

そして、大津波による原発事故が起こると、想定できたはずなのに、平然として「想定外」といったそうなのである。