チョコの甘さは形で決まる? 視覚を操る「近未来の調理法」

わたしたちは色と形を味わっている
大嶋 絵理奈 プロフィール

丸い形は甘そうに見える

しかし、チョコレートの形が味を変えた理由はこれだけではない。

もう一つの理由は、ずばり「丸い形が甘そうに見えた」ためである。

人は、特定の形と味を無意識的に結び付ける傾向がある。これまでに分かっているのは、丸みのあるものからは甘いイメージを、角のあるものからは苦いイメージをしやすいということである。

2011年にイギリス・オックスフォード大学の研究者が行った実験では、カカオの割合が30%、70%、90%のチョコレートをそれぞれ用意して、それぞれのチョコレートの味が、以下の2つの図形のうちどちらの雰囲気に合うかを実験参加者に尋ねた。

チョコレートの味と図形

その結果、30%のチョコレート、すなわち甘いチョコレートほど曲線図形(右側)と一致し、90%のチョコレート、すなわち苦いチョコレートほどギザギザ図形(左側)と一致するという回答が得られた。

この研究から、甘さと丸みのある図形、苦さと角のある図形に、何らかの対応関係があるらしいことが分かった。同じような実験を、チーズやビールを利用して行った場合も、似たようなの結果が得られたという。

このように、人は形から特定の味を連想することを考えると、丸みを帯びた形状に変更されたチョコレート製品の味が「甘くなった」と思われたもう一つの理由は、丸い形自体が甘さを想起させることにあったと言えるだろう。

 

形と味の対応関係は、製品のロゴ決定時にも利用されている可能性がある。たとえば、サッポロビールやハイネケンビールなど、発泡性のお酒などには星のロゴが使われることが多い。星の形状は、発泡性の飲料の口当たりを想像させる役割があるのかもしれない。

偶然にも、ロゴと味の印象が一致する商品の中には、長年愛飲されているものも少なくない。製品自体のみならず、パッケージに描かれている形状も、人の味の感じ方を左右させる可能性があるだろう。

食べ物の風味を変えずとも、視覚を変化させることで味わい方が変わる現象は、れっきとした調理法だと筆者は考える。バーチャルリアリティーなどの仮想的な視覚技術を活用することで、これまで味わったこともないような不思議な食体験ができるようになるのかもしれない。