チョコの甘さは形で決まる? 視覚を操る「近未来の調理法」

わたしたちは色と形を味わっている
大嶋 絵理奈 プロフィール

かき氷のシロップの味覚は全部同じ!?

実は、味覚と嗅覚だけでなく、視覚の情報もまた、食べ物の印象を決める重要な役割をもっている。ここからは、本題である「視覚」について語っていこう。

分かりやすい例が、かき氷のシロップだ。お祭りの屋台で食べるような、昔ながらのかき氷のシロップには、いちご、メロン、ブルーハワイなどがある。これらはすべて「味」が違うように思えるかもしれないが、実は味覚のバランスや強度はすべて同じであることが明らかになっている。

筆者が以前勤めていたAISSY株式会社には、食べ物の味覚(甘味、旨味、塩味、酸味、苦味)を5段階で数値化できる装置「味覚センサーレオ」があった。レオを使っていちご、メロン、ブルーハワイの3種類のかき氷のシロップの味覚を測定したところ、3種類のいずれも、「甘味」と「酸味」が同じようなバランスで含まれていることが分かったのだ。

味覚センサーで計測したかき氷シロップの味覚

これはあるメーカーの同シリーズのシロップを比較した場合であり、この世の全てのシロップが同じ結果になることは保証しない。しかし、味覚は同じでも、香料と着色料によって嗅覚と視覚の刺激が変化することで、そのシロップを「いちご味」と感じたり「ブルーハワイ味」と感じたりするようになるのだ。

 

狩猟採集時代には、赤は甘味を示すサインだった

ほかにも、見た目が食べ物の味わい方を変えてしまう例を紹介していこう。

1982年、アメリカ・マサチューセッツ大学の研究者らは、条件のことなる2つの甘い飲料の味比べ実験を行った。1つは甘い飲料を赤く着色したもの、もう1つは甘い飲料に甘味料を10%加えてさらに甘くしたもの(色は透明のまま)、であった。この2つの味を実験参加者に飲み比べてもらったところ、赤色に着色した甘い飲料は、甘味料を増やした甘い飲料と同じくらい甘いと感じられることが分かったのだ。

一般的に、赤やピンクの色は、人に「甘さ」を想像させやすいと言われている。これは、果実が熟す現象と関係していると考えられている。

多くの果実は、熟すと赤色に変化する photo by DigiPub/gettyimages

多くの果実は、熟していないときには緑色だが、熟して甘さを増していくにつれて、赤色に変化していく。狩猟採集時代には、見た目で食べ物の甘さを判断していたため、果実の赤色は甘味を示すサインだったことだろう。こうした名残によって、人は赤やピンク色から甘さを想像しやすいのだと言われている。

先の研究で、赤色に着色した飲料を甘く感じてしまった理由としては、赤から想起される甘そうなイメージが影響したと考えられている。