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チョコの甘さは形で決まる? 視覚を操る「近未来の調理法」

わたしたちは色と形を味わっている
食べ物を味わうことに関わる感覚といえば、舌で感じる「味覚」や、鼻で感じる「嗅覚」を真っ先に思い浮かべることだろう。しかし、食べ物のおいしさを決めるのは、実はそれだけではない。

食べ物の食感や噛んだときの音、店舗の照明、気候、一緒に食べる人、などなど。食べ物を味わうときの環境全体から受けるさまざまな刺激が、味やおいしさに影響する。

この記事では、食べ物の味には直接関係しないように見える「視覚」が、食べ物の味わい方を変えてしまう面白い研究事例を紹介しよう。

「味」とは味覚と嗅覚が合わさった感覚

まずは、食べ物の「味」について簡単に整理しておこう。人は、食べ物を口で味わっていると感じがちだが、実は食べ物を味わう場所は口だけではない。

肉の味、キャンディーの味など、私たちが「味」と表現する感覚は、専門的には「風味」と呼ばれる。風味とは、舌で感じる味覚と、鼻で感じる嗅覚が合わさった感覚のことを指す。

風味を感じるときにはまず、食べ物に含まれる様々な風味物質が、舌の表面や鼻の奥にある「受容体」という場所で受け取られる。舌には5種類(甘味、旨味、塩味、酸味、苦味)の味覚受容体が、鼻には約400種類の嗅覚受容体がそれぞれある。

次に、受容体が風味物質を受け取った刺激が神経を通じて脳まで届き、脳の中で味覚と嗅覚の刺激が統合される。すると、「これは肉の味だ」「これはキャンディーの味だ」といった具合に、何の味であるかを認識できるようになる。

味を感じるメカニズム

人は味覚と嗅覚の刺激を区別できない

風味を形成する上では、味覚よりも嗅覚のほうが重要だと言われている。このことを実感できる身近な例は、風邪をひいたときだ。風邪によって鼻を詰まらせたとき、食べ物の味がしなくなった経験はないだろうか。5種類の味覚受容体に比べて400種類の嗅覚受容体という数字からも分かるように、豊かな風味を感じとるためには、嗅覚が欠かせないのだ。

しかし一方で、人間は食べ物から感じられる味覚と嗅覚を厳密に区別することはできない。味覚と嗅覚の刺激は、お互いに影響を及ぼしあって、一つのまとまりのある印象を作っているのである。このため、味覚よりも嗅覚のほうが風味にとって重要であるにもかかわらず、人は食べ物を口で味わっているように錯覚してしまうのだ。

 

たとえば、バニラビーンズの入ったアイスクリームを想像してみよう。バニラの香りが強いアイスクリームは、より甘く感じられないだろうか。

しかし、実際にはバニラの香り成分自体が甘味を持っているわけではない。それでも私たちは、アイスクリームの甘さとバニラの香りが一緒になると「より甘いアイスクリーム」と感じてしまう。これは味覚と嗅覚の刺激が統合されて、一つのまとまった印象が生み出されている例だと言える。