地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。
"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
1970年(昭和45年)の今日、東京都杉並区で多数の高校生が、グランドで運動中に原因不明の目やのどの痛みを訴えるという事件がありました。東京都公害研究所の調査によって、その原因であると光化学スモッグであると判明し、初の光化学スモッグによる被害として全国的に注目を集めることとなりました。
光化学スモッグとは、大気中に排出された窒素酸化物(NOX)と揮発性有機化合物(VOCs)が、太陽光線に含まれる紫外線を受けて光化学反応を起こして変質した、オゾン(O3)、ペルオキシアシル・ナイトレート(PAN)などの酸化性物質(光化学オキシダント)の総称です。
強い紫外線によって発生するため、日差しの弱い冬や太陽の出ていない夜間には発生しません。
光化学オキシダントは、その9割をオゾンが占めるとされています。オゾンは、原子の状態である酸素Oに、酸素分子O2が結びつくことで発生します。
成層圏のオゾン層は、紫外線から私たちを守ることで知られていますが、オゾン自体は非常に高い酸性度を持つことから、殺菌や脱臭に用いられ、目や呼吸器などの粘膜などに付着すると強い刺激が生る毒物でもあります。
高濃度の場合は、呼吸困難、麻痺などが起こり、放置すると死に到ります。また、葉が枯れたり、変色するなど、植物にも影響が出ることがあります。
1970年代には、非常に高濃度であった大気中の光化学オキシダントですが、原因物質の発生を抑える努力により、1980年代に入ると下がってきました。しかし、その後は横這いで、近年では漸増傾向の様相さえ見せてきています。
風とともに汚染物質を含んだ空気が移動するので、発生源から遠く離れていても、光化学オキシダントが高濃度となることがあります。
東アジア大陸における、窒素酸化物や揮発性有機化合物の排出量が増大していることで、二次生成物の光化学オキシダントが、国内の広い範囲で増加していることが確認されました。近隣圏だけでなく、環境の改善に対する国際的な取り組みが必要とされていると言えるでしょう。