このようにしてカトリック教会の宗教的権威が失墜していくなか、ローマ法王庁は2019年12月に教会法を改定し、13世紀から施行されていた聖職者の「告解の守秘義務」を撤回した(※8)。今では、信者や聖職者から犯罪性のある告解を受けた司祭は、必ず教会上層部と司法に通報する義務を伴うことになったのだ。

これにより、今後はカトリック教会の秘密主義が薄れることが期待されるが、米AP通信が調査したところ、アメリカでは1700名もの性的虐待をした聖職者たちが、未だに聖職についているという現実がある(※9)

『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』より

「信仰は個人的なもの、教会とは関係ない」

フランスではカトリックが最大の宗教であり、現在、人口の65%が自分たちをカトリック教徒だと捉えているが、そのなかで教会に通う者はわずか4.7%で、65%のうち57%が宗教的活動を一切していないという(※10)。つまり、カトリック教徒のなかでも信心深い人は全体の10%にも満たないのだ。

この点について、パリに住むフランス人のカトリック教徒の家庭に生まれた友人4人(会社員2人、数学者、会社経営者)に聞いてみた。まず、4人とも自分たちを「カトリックの洗礼を受けたからカトリック教徒といえるかもしれない」と捉えているが、成人後は教会へは年に2、3回しか行かないという。教会へ行くのは、「祖父母を訪ねた際に一緒にミサに行く」「心を落ち着けたいときにフラッと立ち寄る」などが理由だった。

イエス・キリスト、聖書、洗礼についての意見を聞くと、「聖書は2000年前に作られた当時の道徳規範のようなものだから言葉通りに受け止めていないし、現代では機能していないと思う」「祖父母がうるさいから、自分の子供たちには洗礼を受けたが、他の儀式には参加していない」と回答した。

さらに、プレナ事件を含む近年の性的虐待事件が彼らの教会への信頼に影響を及ぼしたかと聞くと、4人のうち子供をもつ3人が「教会が被害者よりも虐待司祭を守るなんて許せない」「カトリック司祭が運営するキャンプへは行かせたくない」「子供と司祭を絶対2人きりにはしない」と答えた。

子供をもたない1人の数学者は、叔母がシスターであり敬虔なカトリック教徒として育てられたが、成人後パリに住むようになってからは教会へ殆ど行かないし、祈りも捧げないという。「自分はサイエンスを信じているが、漠然とした神への信仰はある。けれども、信仰は個人的なものであり、制度的な教会への信仰ではない」と話していたのが印象的だった。