時効で裁かれぬ神父たち

短い禁錮刑に加え、今もプレナが自由の身であることが信じられない人もいるだろう。さらに驚くべきは、彼の被害者は2000人程いると言われていることだ(※3)

プレナ本人や被害者たちの証言によると、プレナは1960年代から性的虐待を始めていたが、その多くは15歳以下の未成年への性的虐待で時効が過ぎており、立件できなかったという。この時効については『グレース・オブ・ゴッド』でも描かれており、児童性的虐待において時効がもたらす弊害にも警鐘を鳴らす。

『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』より

フランスでは2018年に性的虐待の時効を、それまでの20年から「被害者が成年に達してから30年」に延長した。これには、あいつぐカトリック聖職者による児童性的虐待、2017年に起きた11歳少女のレイプ事件、児童人権団体による訴えで、時効の見直しが社会的に求められていた背景がある(※4)。 しかし、こうした時効の延長が実現した後も、プレナが犯した犯罪の1/4しか裁かれなかった。このことは、サバイバーたちにとって想像を絶する苦しみだろう。ある意味、新たな暴力を受けたとも言える。

Netflixのドキュメンタリーシリーズ『良心の糾明:聖職者の児童虐待を暴く』は、スペインのカトリック神学校などで起こった児童性的虐待事件を検証した作品だが、このなかでも時効により多くの事件が立件されないことを摘発している。

また、同じくNetflixのドキュメンタリー『キーパーズ』は、1969年に発生したシスターの殺人事件の真実に迫るもので、カトリックの女子校で起こった神父による生徒への性暴力が解明されていくうちに、被害者の多くが性虐待の記憶を失ってしまう現象をあぶり出す。性被害を受けた人々のなかには記憶を封印する人も少なくない。そもそも、未成年の被害者が訴え出ること自体、非常に困難なのだ。

ちなみに、日本の性暴力の時効は5年から10年で成立し、フランスのように被害者が成年になるまで時効はストップしない。イギリスやオランダでは深刻な性的虐待事件については時効が存在しないそうだし、これは日本において議論されるべき問題だろう。