2000年代に入り、世界各地、特にヨーロッパやアメリカにおけるカトリック司祭が犯した性的虐待事件が告発されるようになった。それも一因なのだろう、ヨーロッパや北米のカトリック信者数の人口における割合は低下し、これらの地域では司祭の数も年々減少している。

7月17日に公開されたフランソワ・オゾン監督の新作『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』は、フランスを今も揺るがせている係争中のカトリックの神父による性虐待事件を映画化したもので、2019年度のベルリン国際映画祭で審査員グランプリ銀熊賞を受賞した。

『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』より

聖職者による性的虐待については、これまでも非常に優れたハリウッド映画やドキュメンタリーが存在するが、犯罪や教会の隠蔽性に重点を置いたこれらの作品と異なり、オゾン監督の新作は被害を受けた3人のサバイバーがそれぞれにトラウマと向き合い闘うさまを描いた点で一線を画する。

サバイバーと彼らの家族の苦悩や再生への道のり、そして、被害者の会の多様な人々を丁寧に、余計な演出を一切を省いて映し出した本作は、サバイバーの怒りと悲しみが胸に迫る映画だ。

80人以上もの少年が性的虐待を受けた「プレナ事件」

1971年から91年にかけ、7歳から15歳までの少年80人以上に性暴力を働いた実在のベルナール・プレナ神父(現在75歳)の事件は、「プレナ事件」としてフランスを震撼させた。2015年、成人したサバイバーたちが被害者の会を結成し、2016年1月に行った記者会見を通してプレナの性暴力、並びに教会がプレナの犯した罪を1970年代から隠蔽していた罪を明らかにした。この模様は大きく報道され、フランスの誰もがプレナ神父の名を知ることになった。

『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』より

この事件を映画化した『グレース・オブ・ゴッド』は本国では2019年2月に公開され、実際の事件の裁判も同じ頃に始まったという。そして約1ヶ月後の3月7日、プレナ神父を監督する立場にあり、事件を知りながらも神父を警察へ通報しなかったフィリップ・バルバラン枢機卿は、隠蔽の罪で執行猶予付禁固6ヶ月の判決が下された。バルバラン枢機卿はフランスのカトリック教会で最大の権力者だったことから、国内外のカトリックコミュニティに激震が走った。

2019年7月、教会裁判所はプレナ神父の還俗(僧侶がその籍を捨て、俗人に戻ること)を決定。2020年1月にはプレナの公判が始まり、プレナ本人も少年時代に聖職者から性的虐待を受けていたことが発覚した。今年3月16日に禁錮5年が言い渡されたが、プレナは上訴中で、上訴中は拘束されないことから、彼は今でも刑に服していない。つまり本事件は、世界が注目する現在進行中の事件なのである(※1,2)