「すた丼」(画像:株式会社アントワークス)
# 飲食店

ドンブリ界の異端児「すた丼」、男たちが“鉄の掟”に惚れ込む理由

なぜ心も腹も満たされるのか

『気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』。そのタイトルに誘われ、一読すれば各店の「あるある」や「なるほど」に納得させられた人気“メシもの”エッセイ第2巻『それでも気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』がついに文庫化!

誰もがきっと食べたことのあるおなじみのチェーン店36店を収録した本書の中から、今回は「伝説のすた丼屋」を語ったパートを公開します。

イラスト:サカモトトシカズ
 

若い連中に腹いっぱい食わせてあげたい

“掟”。

誰もが自由を享受する、この21世紀の世の中において、これだけ強い拘束力と閉鎖的な約定を臭わせる言葉は絶滅寸前である。

その誓いは血よりも濃く、背いた場合は相応の償いを迫られる。白土三平漫画あたりの常識であれば、どんなに逃れようとしても地の果てまで組織に追われ、悲惨な最期を迎えるのは必定。

そんな、物騒すぎる日本古来の伝統が、のんきな平成日本で「さて、丼メシでも」と、気楽に入った店の中で唐突に突きつけられる。ドでかい看板に書かれた何よりも大きな“掟”の巨大文字。デカすぎて、目の背けようがない。

店の名は『伝説のすた丼屋』。押忍。

創業昭和46年。国立のはずれに開店した小さなラーメン店は「オヤジ」と呼ばれる創業者が「若い連中に腹いっぱい食わせてあげたい」という熱い思いから、その激烈な一杯を生み落とした。

文字通りスタミナ満点の「すた丼」。気合いを入れたい時のこの一杯は、ドンブリ界の最終奥義と言うに相応しい。最近はすっかりご無沙汰になってしまったが、筆者が若い頃は相当お世話になった店だ。