そもそも「免疫力」って何?

6月18日に自粛要請が緩和されたとはいえ、新型コロナウイルスの感染者は出続けており、しかも感染した場合の治療薬も、病気を予防するワクチンもまだできていません。

世界中を席捲するこのウイルスに対して、しばらくは素手で戦わなければならない私たち。そのせいか、あちこちでやたらと耳にするのが「免疫力をアップさせてコロナから身を守る」というキャッチフレーズです。50代女性520人による市場調査アンケート(ハルメク調べ)では、新型コロナについて心がけていることは? という質問の回答が、「情報に踊らされないこと」が第1位、そして「免疫力を高める」が第2位となっていました。もはや「免疫力アップ」は自衛手段の代名詞なんですね。

でも、「免疫力」ってなんだろう? 自分でコントロールできるもの? 
知っていそうで知らない、「免疫」の仕組みを、宮坂昌之・大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授に一から教えてもらいました。

宮坂先生は、『免疫と「病」の科学』『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ』(ともに講談社ブルーバックス刊)など一般向けの科学書も書かれていますが、2007~2008年に日本免疫学会会長をつとめた、日本における免疫学の第一人者です。このシリーズ恒例ですが、文系脳の自分が理解できるように、思いっきり脳内変換した例えも使いました。

宮坂先生には多大なご協力をいただいていますが、記事中におけるすべての文責は、私・花房麗子にあることを明記しておきます。

「情報に踊らされず」に「免疫力」を高めるとはどういうことなのか――Photo by iStock

実は「免疫力」という学術用語はない

「『免疫力』という言葉が健康文脈で使われ出したのは意外と最近で、ここ10年ぐらいじゃないかと思います。じつは免疫力という学術用語はありません。免疫の働きのことは、我々免疫学者は『免疫能』と言います。ただ免疫力といえば、体力とか抵抗力とかいった言葉と同様に『強くできる』というイメージを一般の人が抱きやすいため、さかんに使われるようになったのでしょう。私もブルーバックスシリーズ第二弾では、編集者の提案に従って一般の人が馴染みやすいように『免疫力を強くする』というタイトルにしました。先生、だめじゃないですか、と研究者の方々に、後で冗談めかして叱られましたが(笑)」

宮坂先生がこうお話しするように、たしかに「免疫力」というと「身体のなかの抵抗力」みたいな感じは抱きますよね。ためしにネットで「免疫力アップ コロナ」でグーグル検索してみました。すると出るわ出るわ……「玉ねぎ皮茶」「サバ納豆缶」「ローヤルゼリー」「黒にんにく」「高麗人参茶」「マヌカハニー」といった食品はいうに及ばず、「爪をもむ」「ハードロックを歌う」「涙活(るいかつ)」「笑う」、「寝るだけで免疫力アップのふとん」など、謎のワードで溢れています。

6月5日には新型コロナ予防とうたいながら根拠のない商品について、消費者庁が「表示改善要請」を出しました。その典型例が「新型コロナ対策サプリで免疫力アップ!」というものです。