イケメンの自己紹介文に、女がドン引きした理由

――......こんなことして、本当に結婚できるのかな。

徳光のアドバイスに従いプロフィール写真を選びながら、留美は虚無感に襲われていた。

自粛期間中に神宮前の一人暮らしのマンションで孤独に32歳の誕生日を迎えて以来、こうして気持ちが塞ぎ込むことが度々ある。今でこそ少しずつ外に出て人と会うようになったが、緊急事態宣言が発令された2ヶ月間はあまりに孤独で、寂しさゆえに一人涙を流した夜もあったくらいだ。

元彼・拓巳とは昨年末に仲間内の忘年会で出会い交際に発展したが、何となく、最初から違和感はあった。

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同い年で大手航空会社のパイロット、甘い顔立ちをした拓巳は留美にとって悪くない条件の男だった。性格的にも不満はなく、年齢的に結婚も考えていた。しかしながら二人の関係はどこかドライで、距離が縮まらないまま他の女と浮気......いや、完全に乗り換えられていたのだ。

SNSを辿ったところ、相手の女が20代前半のモデルであったことも重いダメージとして残っている。

――やっぱり、男は若い女が好きなのよね。

そもそも30歳を過ぎたあたりから、そんな出会いばかり繰り返している。友人のほとんどはすでに結婚しているし、合コンなどの出会いの場は激減し、「いいかも」と思う男性と出会ってもイマイチうまく行かない。

――えっ!?ヒョンビン!?!?

悲観に暮れながらスマホ画面を眺めていた留美は、突然我に返って指を止めた。

そこには、自粛中に散々ハマったNETFLIXのドラマ『愛の不時着』のヒーロー役である韓国俳優・ヒョンビンに似た男の顔があった。たった今、彼の方から『いいね』が送られてきたのだ。

留美は即座に『ありがとう』のボタンを押し、男のプロフィール詳細に飛んでみる。

――へぇ。商社マンなんだ。年収750~1000万円、29歳......年下かぁ。

男の顔をよく確認しようとするが、ヒョンビン風味の整った顔立ちは画像が荒く少々ボケていて、他の写真も風景や小さな後ろ姿だけだった。

さらに男の自己紹介文に目を通した留美は、思わず顔をしかめる。

『昨年末に駐在から戻りました。本来はこのようなアプリは信用しませんが、長く付き合っていた彼女と別れてから良い女性に出会えず、友人の勧めで登録しました。真面目な性格ですが、周囲からは頑固・融通が効かないと言われ......』

マッチングアプリのプロフィールにわざわざ「アプリ信用しない」と書いたり、元カノについて言及する男がどこにいるだろうか。理屈っぽい長文は最後まで読む気にもならず、ハッキリ言ってドン引きである。

徳光に散々ダメ出しをされた直後であるが、上には上がいるようだ。

――明らかに変な男......。やっぱり、アプリなんてこんなモノよね。現実世界でも出会いを探さないと......。

徳光に言われた通りプロフィール写真は増やしてみたが、どうせ大した収穫はないだろう。やはりイイ男は、アプリなんかでなく現実世界に存在するのだ。

留美はがっくりと肩を落とすと、スマホを軽く放り投げてベットに潜り込んだ。

けれども......。

この時はまだ、留美はマッチングアプリによって運命が大きく変わることなど、知る由もなかったのだ。