プロフィール写真を10枚並べ、結婚生活を想像させるべし

「ねぇとくちゃん!このアプリ、ぜんぜん上手くマッチングしないんだけど!?」

しかしながらその晩、留美は憤慨して徳光に電話をかけていた。

帰宅後にじっくりアプリと向かい合ってみたところ、衝撃の事実が発覚したのだ。

操作に不慣れで気づかなかったのだが、留美が「悪くない」とポップアップされた写真の中からハートマークを押していた男たちは、なんと自分から『いいね』というマッチングのオファーを送っていたようなのだ。そして信じられないことに、そのほとんどが留美のアクションに対して無反応である。

さらに留美の元に届いた『いいね』やメールをの送信者をザッと確認したところ、平均年齢は40歳以上とかなり高く、留美が選別した男たちより明らかにスペックが低い。

要は、好みの男が留美に興味を示した形跡がなく、マッチングが発生しないのだ。心外にもほどがある。

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「まぁ、30歳超えの女のアプリ参戦はイージーゲームじゃないからな」

「はぁ!?でもランキングの女たちなんて、若くても写真加工しまくってるじゃない!私の方がよっぽどマトモなのに、なんでマッチングしないのよ?」

「じゃあ、留美のプロフィールのスクショ送って見せてくれよ」

怒りを抑えつつスクショを送ると、「どれどれ......」と呟いた後に、徳光は嘲笑うように鼻を鳴らした。

「ダメだな、こりゃ。全くダメだ。こんなんじゃイイ男は寄ってこない」

「なんでよ?写真はセンスが良いし、ダラダラと紹介文書いても必死感が出てダサいじゃない」

「まさにその高飛車感がプロフ画面に滲み出てるんだ。だから年上のオッサンにしか興味持たれないんだよ」

その言葉に、留美は絶句する。

「まずは写真だな。留美の顔・スタイル・趣味・日常生活が分かるモノを10枚並べろ」

「10枚?そんなに必要ないでしょ......?」

「いや、ある。あのな、アプリユーザーの男のほとんどは検索画面で30歳以上を足切りするんだよ。だからこそ、留美のプロフまで辿り着いた男には敬意を示さなきゃダメだ。プロフィールを充実させて自己PRするんだよ」

「30歳以上は足切り?私が、足切り......?」

留美は目眩すら覚えた。肌も体型も20代の頃と代わりはないし、実際20代半ばに間違われることも多い。そんな自分が実年齢だけで排除されるなんて納得ができない。

「酷な話だが、歳は仕方ないと思って諦めろ。留美だって40歳以上の男はイマイチと思ったんだろ。男も同じで30歳以上の女はイマイチなんだよ」

「年齢で不利になるなら、やっぱりアプリなんか微妙じゃ......」

「いや違う。30オーバーの女こそ、戦略次第で絶対に勝てる。とにかく写真は厳選するんだぞ?1枚目は盛れた顔写真、2枚目はスニーカーを履いた全身姿、3枚目は食事中の写真......そうやってシーン別の写真を載せることで、留美と一緒に過ごす日常、いや、結婚生活を想像させるんだ!」

「............」

たかがアプリの写真に、そこまで拘る必要があるのだろうか。

そんなことをしても現状がそう変わるとは思えなかったが、留美は徳光の熱気に押され、渋々「わかった」と返事をした。