「ハイスペックな出会い」は本当にアプリで探せるのか?

後日、マッチングアプリの審査に無事通過した留美は、その慣れない操作に悪戦苦闘していた。

試しに写真を1枚載せて簡単なプロフィールを入力したところ、一晩で大量の通知が届いたのだ。

――なにこれ?このハートマークを押せばいいわけ......?

寝起きの重たい目を擦りながら、留美は物色を始める。

アプリの画面には、男の顔写真と共に年齢や居住地、さらにはご丁寧に年収までも記載されていた。徳光に言われるまま『ハイスペックな出会い』という宣伝文句を掲げたアプリをインストールしたのだが、たしかに年収の高い男が揃っているようだ。

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――ふーん。都内在住勤務医、34歳、年収1200~1500万円か.......。

留美は戸惑いながらも、ポップアップで次々と表示される男たちの写真を選別しいていく。

さらにはメールボックスなどにも多くの通知が届いており、すべてに目を通すのはかなり時間がかかりそうだ。

――やっぱり私みたいな女がアプリに登録したら、大騒ぎになっちゃうわよね。

留美は改めて自分のプロフィール画面を確認すると、つい口元が緩んだ。

バッチリとキメた顔写真を載せるのはダサいと思い横顔のものを選んだが、誰がどう見ても美人だと分かるはずだ。プロフィールも必須事項の最低限しか記入していないものの、それが『謎の美女感』を醸し出しているに違いない。

東京生まれ東京育ち、都内の女子校から上智大学に進み、外資系ラグジュアリーブランドの秘書をしている留美は10代から異性との出会いに困ったことはない。それどころか、学生時代は何度もミスコンに誘われた美貌を武器に、モテ人生を歩んできたと言える。

だからこそ“アプリの出会い”などモテない人種のためのツールだと決めつけていたが、人と会うこと自体が激減したこのご時世、そんなことも言ってはいられない。それに徳光が力説していた通り、たしかに効率は良さそうだ。

食事会などに参加しても出会える人数は限られているし、その場で時間かけてプロフィールを探り合うことを考えると、ほんの数分で多くの情報を得られるマッチングアプリは便利である。

――また夜にゆっくり確認しようっと。

そうして自身の女としての需要の高さをたっぷりと実感した留美は、上機嫌で仕事へ向ったのだった。