令和の出会いはアプリから

「......は?マッチングアプリ?そんなの私はやらないわよ」

一枚板のバーカウンターにほとんど突っ伏しそうになりながら、留美は幼馴染の徳光オサムをギロリと睨んだ。

新型コロナウィルスの影響で長らく自粛をしていたから、こうして外で飲むのは久しぶりだ。気の置けない友人と六本木で焼肉を食べ、そのまま西麻布のバーに流れるなんて夜は少し前なら日常だったが、今となってはその貴重さを噛み締めずにはいられない。

けれどその結果、留美はひどく泥酔することになった。

「あのな、このご時世、アプリを馬鹿にしてたら婚活市場で負け続けるぞ」

「......でもさ、なんかキモくない?アプリって」

「だから、その考え方が古いんだよ。令和の出会いはアプリが主流だぞ?」

留美はとうとうカウンターに頭を預け、深い溜息を吐く。気を抜くと涙までこぼれてしまいそうだ。

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泥酔の原因は、コロナのストレスだけではない。

実は、少し前に恋人の拓巳と破局したばかりだ。「今は濃厚接触はやめておこう」と自粛期間中に泣く泣くデートを控えていたら、なんと彼は他の女と同棲していたことが発覚したのだ。

「同棲ってさ......濃厚にもほどがあるでしょ......馬鹿にしてんの......?」

拓巳の爽やかな笑顔を頭に浮かべながら、留美はほとんど呂律が回らない状態で呟く。

「アプリほど効率的・合理的な出会いツールは他にないぞ?アプリを制す者は、すべてを制すと言える。なぜなら......」

しかし徳光は留美の愚痴を完全無視し、鼻息荒くマッチングアプリについて語り続けている。

徳光は外資系コンサルティングファームに勤めるエリートだが、少し前からマッチングアプリの研究に凝っていて、一度プレゼンを始めると止まらなくなるのだ。

――結婚......すると思ってたのになぁ。

そんな彼を尻目に、留美は薄れていく意識の中でスマホを手に取り、投げやりにマッチングアプリをインストールしたのだった。