今後は芸術家本人の意志が問われる時代

日本では活動を応援するシステムはあっても、才能を守るシステムのようなものはないと思います。才能に対する評価というのは、何が基準なのか難しいところがあると思いますが、欧米には歴史の積み重ねによって、評価の基準となる絶対軸のようなものが存在していると思うのです。明治時代に文明開化が始まって、もう百数十年経っていますが、日本人はなんでも日本流にアレンジして自分たちのものにしていく文化なので、どうしても西洋的な感覚とは同じにはなりません。欧米を基準にすると日本が特殊に見えるのは、その文化的な感覚も大きな要因だと思うのです。

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今までは欧米と並ぶレベルを目指すことが一つの指標になっていたところがあると思うのですが、そういう価値観ももう無くなっているのかもしれません。そして軸がどこにあるのかもわからなくなってきているように感じていました。そこにこのコロナ禍です。

今回の新型コロナの災厄は、考える時間を与えてくれたと思います。断捨離をした人も多かったということですが、「本当に必要なもの」について考えるきっかけとなっているとも思うのです。“芸術家”とは「想像力が人に希望を与える」ということを証明できる人たち。そのために活動をしている人たちを指します。

今後は更に、芸術家本人の意志が問われる時代になると思います。おそらく、欧米と同じような環境を求めても、その実現は不可能でしょう。でも、この日本の文化の中で本当の意味で芸術活動が発展していくためにどうしたらよいか、ということは考えられると思うし、考えなくてはいけないと思います。

損得だけに囚われることなく、本当の意味で発展させていくためには何が必要なのか。個々のアーティストが考え、発信をしていく必要があるのではないかと考えます。私も、今までの経験を更に活かしていけるように、そして、自分の意志を伝えていけるように、活動していくつもりです。

撮影/森清

草刈民代(Tamiyo Kusakari)
東京都生まれ。牧阿佐美バレエ団の主要バレリーナとして活躍、1987年全国舞踊コンクール第1部第1位、文部大臣奨励賞をはじめ、数多くの賞を受賞してきた。バレリーナとしては10年前に引退したが、国内外の公演でプロデューサーとして、アーティストととして活躍し続けている。96年の映画『Shall we ダンス?』(周防正行監督)の主演を機に、映画やドラマでも活躍。現在『私の家政婦ナギサさん』(TBSテレビ火曜10時~)に出演中。