なぜリベラルは負け続け、いつまでも現実を変えられないのか?

「百田尚樹現象」から見えてくること
現代ビジネス編集部 プロフィール

「わかりやすく複雑だと書く」こと

――ファクトチェックだけではなかなかそこにはたどり着きませんよね。

ファクトチェックだけだと言葉が貧しくなりますし、「無敵の論法」で上からチェックするとなりかねない。しかし、ファクトチェックそれ自体は手法の一つにすぎません。それだけで相手を説得できると思っている人もいる状況はまずいと思います。

リベラル派から見た安倍政権について、多くのファクトチェックがなされている。でも、なぜあの政権が長続きしているのか、誰が支持しているのか、そのほうがずっと大事な話だと僕は考えています。空虚な政権だとしても支持されてきた現実をどう考えるか、なぜ、どうしてという問いを立てないと見えてこないものがある。

――そうですよね。右派は何度も同様の主張を繰り返し、左派は間違っていると言うだけのサイクルからいかに抜け出すか、そして、オーソドックスな「なぜ、どうして」という問いに向き合っていかないと現実は変わらないと。

そうです。あとは、右も左も忘れっぽくなっていることを指摘しておきたいですね。その瞬間の発言・主張にしか目が向かなくなっているから、百田さんにしても小池都知事にしても過去に言ったことを全然覚えていない。そういう意味では、常に最新形態しかない、これは歴史の断絶の成れの果てです。

 

――そういう厄介な時代にノンフィクションライターとしてはどう向き合うのでしょうか。

基本はやはり、取材して書くことです。もちろん、取材したところで現実がきれいにわかるわけではないけれど、多様性や複雑性に気づくことが多い。ジャーナリズムの世界は特にネット・SNS全盛の時代になって、複雑さを削ぎ落として単純化して見せすぎてきたように思います。でも、僕はそれとは違うやり方で、「わかりやすく複雑だと書く」ことを大事にしていきたいです。

そのうえで、こうした現実を沢木さんや猪瀬さんら昔のノンフィクション作家が積み上げてきた仕事のように、洗練された文章で伝えたいです。取材をして、複雑なものをつかみ、それを洗練された形で書く。今回の『ルポ 百田尚樹現象』ではそれを試みたし、「平成右派論壇の盛衰」という一時代を描くことができたという自負はあります。この本が、複雑な時代や現実と向き合うきっかけになれば嬉しいです。