なぜリベラルは負け続け、いつまでも現実を変えられないのか?

「百田尚樹現象」から見えてくること
現代ビジネス編集部 プロフィール

理解するための議論が必要

――モンスター扱いするとか間違っていると言うだけでは、極化しますよね。SNSでは、論破合戦ばかりというか……。

勝つことが目的化する議論には落とし穴があります。相手に勝ちたい、自分たちが正しくありたいと思うと、単一の正解を求めるようになってしまう。これは科学的なエビデンスがあります(『別冊日経サイエンス 心と行動の科学』所収「勝つための議論の落とし穴」)。

僕はいま求められているのは、理解するための議論だと思っています。あなたたちはどういう考えなのか、なぜそう考えるのかを理解する。最新のエビデンスでは、理解しあう議論を通じて、世の中が多様であることを認められるようになるといいます。これは当たり前の話なんだけど(笑)

彼らには彼らの日常があり、マーケットがある。僕の仕事としては、分断を繋ぎ止めることかなと思っています。ただ意見を言い合うだけならまだいいけれど、左右を問わず、行動や思想を含めて極端になってしまうと非常に危ういです。だからこそ、意見が違う人たちの行動原理を解き明かすことや、いま起きている現実を可視化していく手法がこの時代には必要だと思っています。

 

――集団極化すると、対話は困難なんでしょうか?

対話というと大げさだけど、まずもって「なんでそんなこと考えてるの?」という問いを発すること自体が困難になりますよね。そうなると、人生を知ることで見えてくるものもあるのに、それが見えなくなってしまう。

――人間として認めるところは認めていこう、と。

認めることは、労力がかかるんです。「あいつは間違っている」と言うだけならラクなこと。それはオピニオンの仕事だし、Twitterでがんがんやってればいい。でも、僕がやるべき仕事ではないでしょう。僕は、人間を理解しながら、問いを設定して、それと向き合っていきたいと思っています。

――問いの立て方が大事になりますね。

大事なのは、繰り返しになります、意見が違う人々が「なぜそう考えるのか」「なぜ支持されるのか」と問うことです。どこが間違っているのかという問い方だけだと、間違っていたことを確認する以上の成果を得られません。

だから、今の時代に必要なのは、「なぜ、どうして」という問いを立てること。昔からノンフィクションはそれをやってきたわけです。猪瀬直樹さんの『昭和16年夏の敗戦』は、どうしてあんな戦争に突入したのかを問う。沢木耕太郎さんの『危機の宰相』は、高度経済成長がなぜ実現したのか、「所得倍増」という戦後最大のコピーがどのように生まれたのかに迫っています。