なぜリベラルは負け続け、いつまでも現実を変えられないのか?

「百田尚樹現象」から見えてくること
現代ビジネス編集部 プロフィール

マーケット的成功からひもとく

――加えて、左派、リベラル派は売れる右派の本をどこか軽く見ていた。

そう。百田さんは新しい伝え方で日本の歴史や戦争を書き記したいと思ったと言い、『永遠の0』では売り上げも、朝日新聞の書評が与えたインパクトも含めて圧倒的な成功を収めています。

小林さんはおじいちゃんおばあちゃんの気持ちを大切にしたいといった気持ちがあって『戦争論』を書き上げた。僕のインタビューに、小林さんは『戦争論』で、個人と公の関係を問い直すようなものを描きたかったと言っています。それはまさに今の現代日本でも求められているテーマです。

藤岡さんについて言えば、冷戦の終結とともに自分が信じてきた左派イデオロギーが崩れ去った。それは人生が否定されたようなもので、彼はそれと向き合ったから転向した。冷戦が終わり、ソ連が崩壊しても全然大丈夫というほうがむしろ無責任だと僕は思いました。彼らの初発の動機自体はそこはどうしても責められないでしょう。

大事なのは、彼らがなぜマーケット的な成功を収めたのかを問うことでした。しかし、そうした問いから始まる取材や、論考は圧倒的に少なかったと思います。

 

――リベラル派はそれらの動機すらも理解してこなかった。

そうです。動機を理解していれば、リベラル派はここまで深刻な事態にはならなかったはずです。厳しいことを言えば、今の右派と左派は似ている部分もあると思っています。

――その心は?

右派における南京大虐殺や慰安婦問題が、左派にとっての「反安倍」です。最新型はハッシュタグでムーブメントを起こそうという動きです、インターネットを活用し、とにかく動員するときに便利なのは、それさえ言っていればいいというスローガンのような言葉です。それがどちらにもある。細かく問うていけば、一致点がない言葉です。空っぽなスローガンだけがあって、なんとなくムードを作って動かそうとする。でも、それで現実は見えません。今回右派のキーパーソンたちに取材して、人間が見えてきました。人間を批評する上で、大事なのは、全部がダメ、全部が良いではなく、ここは良くてここは悪いとフェアな視点から描きだすことです。