立ちはだかる120億円の壁…半沢直樹「伊勢島ホテル事件」を振り返る

5分で分かる「半沢直樹」⑤
村上 貴史 プロフィール

「で、どうして私なんです?」

ですが……ですがですよ。それを何故半沢直樹が引き受けねばならないのか。もともと伊勢島ホテルを管轄していたのは、東京中央銀行の法人部でした。本来であれば、ここが責任を持って立て直すべきです。ですが、この部署は伊勢島ホテルの運用損失を見逃していたという失態もあり、頭取の信頼を失いました。かといって、業績が悪化した取引先を専門とする“病院”こと審査部に委ねるとなると、これは銀行自身が伊勢島ホテルの問題を認めたことになって、先に述べた巨額の引当金という流れになってしまいます。

というわけで――“というわけ”でもなんでもないんですが――営業第二部にお鉢が回ってきたという次第。それも、半沢直樹をご指名で。

 

その指示に対する半沢直樹の反応はといえば「で、どうして私なんです?」というものでした。そういいたくもなりますよね。半沢もこの指示に対して“あきれ顔で、ため息をついた”りするんですが、そこは流石に東京中央銀行です。同資本系列の企業を担当する半沢直樹にこの仕事を押し付けるロジックを構築したうえで、上司が話を持ってくるのです。“頭取命令”という切り札とともに。

かくして半沢は伊勢島ホテルの再建に乗り出すことになるのですが、これ、なかなかに厄介な案件なのです。

イラスト/ジェントルメン中村

先に述べたように、伊勢島ホテルが同族経営だったり社長追い落としを企む専務がいたりと、内部がぐちゃぐちゃです。それぞれが勝手な方向を向いているわけで、そんな状態では再建プランなど絵に描いた餅になってしまいます。

再建させる相手に問題があるだけでなく、身内にも問題があります。東京中央銀行は、産業中央銀行と東京第一銀行が合併して誕生した銀行なんですが、社内では、旧S、旧Tという縄張り意識が根強く残っていて、それが再建プランの立案や推進において、あれやこれやと邪魔になってくるのです。